ゆんの業務改善ブログ

①生産性向上 ②業務改善 ③自動化 について情報発信しています。VBAプログラムは本当の初心者から他のアプリケーションを呼び出して使う上級者的な使い方まで幅広いレベルで解説していきます。

自動化ツールを組織として運用する時に用意すべき3つの掟

業務効率の改善や作業の品質向上の観点から自動化を推してきました。そして、非エンジニアの事務職が取り組めるプログラミング言語としてVBAをオススメしています。外注するのではなく、自分自身でツールを開発するからこそ自分好みの自動化が自由自在だからです。

一方で、VBAによるマクロを嫌う人がいるのも事実です。それは作業がブラックボックス化して業務の内容が分からなくなったり、業務内容に変更があったときにメンテナンスができなくなったりする可能性があるからです。まさにVBAによる自作ツールの弱点を的確に突いた指摘です。これは自分好みの自動化が自由自在に気軽にできる事の裏返しと言えます。

個人的に日々の業務をちょっと便利にすると言った程度の使い方であれば、業務を引き継ぐ時にあえて自動化したマクロツールを渡さないと言う手があります。しかし,実際は便利な自動化ツールがあるとついそれを使って引き継ぐ方が楽である為に自動化ツールを使うことを前提とした引き継ぎをしてしまいがちです。

これがいくつかの引き継ぎを経て、最終的に「中身がよく分からないけどとにかくこのマクロを使う」と言った謎の業務を生むことにつながってしまうのです。

個人的な便利ツールですらこのようなブラックボックス化の危険があるわけですから、組織として業務効率改善の手段として自動化に取り組むにはなおさらの注意が必要です。

DX(デジタルトランスフォーメーション)の一環として自動化や見えるかツールの内製に取り組む組織のために処方箋を提案していきたいと思います。業務改善やプログラミング、ツールの紹介や解説はこのような処方箋とセットで考えるべきモノです。

VBAなどの自作ツールの落とし穴

既に述べたようにVBAで自作したプログラムは自分好みにできる一方、単に自動化するだけであればブラックボックスを増やす事になってしまいます。本来、プログラム作業を自動化すると言うことは、作業を手順化することや判断基準を明確にすることにつながるため、むしろ作業の明確化につながるべきハズのモノです。

なぜ、そうならずに自動化する事によって自動化がブラックボックス化してしまうかというと、もともとの業務手順が明確になっていないからなのです。ERPからデータをダウンロードして加工してレポートに仕上げると言う作業があるとしましょう。すると、大概の場合、この作業の過程は人によって微妙にやり方が違ったり個人的な工夫が施されて利しているモノです。だから、それを自動化すると、プログラムの中身もわからないのでブラックボックス化してしまうということにつながるわけです。

以上のことから、VBAで自動化プログラムを作ることはブラックボックスの温床につながる危険性を秘めていますが、実はその真の原因は、VBAというプログラム言語や、自動化という作業そのものにあるのではなく、そもそも業務手順が明確化されていないことや自動化ツールの仕様が残されていないことにある、と言う事が分かります。

落とし穴があるからと言って取り組んでいけないわけではない

落とし穴があると言うことは、その落とし穴にはまらないようにすれば良いわけです。前の項で説明したように業務自動化の落とし穴は作業がブラックボックス化してしまうことにありました。そしてツールに頼った結果、誰の作業ができなくなったり作業の本質を理解できなくなってしまうことが問題です。

そのために業務手順を明確にし、自動化ツールの仕様を明確にしておくことが求められます。この時に大切な事は、業務手順書を作らねばならない、仕様書を作らねばならない、と意気込まないことが大切です。手の込んだ業務マニュアルは形骸化します。また、作業手順が変更になったときに手軽に改訂ができる程度の粒度で作成されていないと実運用とドキュメントに乖離ができて、これまた形骸化の温床となってしまいます。

それではどのようなドキュメントを用意すれば落とし穴を防げるのか、具体的に見ていきましょう

組織として用意すべき3つの掟

業務要綱を整備する

まずは業務要綱です。業務要綱はその業務の根本的な性質を説明するのが目的で、以下のような内容を含むようにします。

  • その業務の目的・意義
  • 概要
  • 大まかな手順
  • 関連情報

よく、配置転換や離職にともない業務引継の時にあわてて作業手順をまとめた書類を作成する人を見かけますが、本来このような場面で引き継ぐべきものが業務要綱です。作業マニュアルとの違いは事細かに作業の手順が書いてあるわけではない点です。バックオフィス、事務職の作業は事細かに作業手順を記録するよりも、むしろその業務の目的や意義、概要を押さえることの方が大切な場合が多いです。業務の本質を理解する事がより大切だからです。

つまり,『単価と販売数量をかけ算した金額を全て足し、月次累計データの金額のその日の売上売上欄に記入する』ではなく、『売上動向を分析するために日々の売上金額を記録する』のように作業の理由を知ることの方が大切です。

例えば売上集計のデータのフォーマットが変更になるなどの、細かい作業の変更があっても業務の本質が変わらない様な場合には改訂が発生しないという程度を手順の記述の目安にするよと良いでしょう。

仕様書を用意する

上述のような業務要綱を整備した上で、自動化ツールの仕様書を準備します。自動化ツールの仕様書については
会社員がVBAで自動化するのに必要な開発ドキュメント3点に詳しく解説していますので、よろしければそちらをご覧下さい。

仕様書を作成する目的は、『自動化ツールが壊れたり無くなったりしても同等の機能を持つツールを自作できるようにする』ことです。そのために必要な事は厳密な要件定義などではありません。

プロのソフト屋さんが作成するような細かいしっかりとした仕様書を作成する必要はありません。非エンジニアがバックオフィスで使う自動化ツールの仕様書は、プログラムの内容の翻訳ではなく要するに何をやっているのかと言う事をまとめていくことが大切です。

また、仕様書は作業内容を明確にする効果もあるので、人に渡して使ってもらうことを想定したプログラムの場合は極力柵壊死するようにしましょう。組織として運用する場合は必須です。

業務要綱と仕様書、改訂履歴、プログラムを紐付ける

業務要綱と仕様書ができたら、改訂履歴が分かる様にしておきましょう。あなたが先輩から引き継いだ業務の中に、何のためにやっているのかイマイチ理解できないものはありませんか?このような業務は結果的に「今となっては不要」となっているモノも多く存在しているものですが、本当辞めても影響が出ないか判断するのは困難です。

そこで、業務の変遷、変更が履歴として残っていれば、現在行っている業務の意味が分かることにつながります。また、プログラムも業務の変更に応じて改訂されていくものです。

このときにプログラムの中身を書き換えてしまうのではなく、不要になった部分をコメントアウトして、新しいプログラムの部分に改訂履歴の日付と業務要綱のバージョンを記すことによって、プログラムと業務要綱、改訂履歴、仕様書の整合が取れることになります。

ここまで行う事によって、冒頭で述べた『VBAによる業務自動化はブラックボックス化の温床』となることを防ぐことができるのです。

業務改善のために自動化を検討するのも良いですが、まずは業務要綱作成に着手するところから初めてはどうでしょうか。

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リモートワークの定着で見えてきたニューノーマルな働き方

2020年4月の在宅勤務開始から早くも半年が過ぎようとしています。この間、世の中ではリモートワークをきっかけに働き方やジョブ型雇用、脱ハンコなど働き方に関する様々な前提を見直す流れが生まれました。今後、バックオフィスの職場はどう変わっていくのか、そして私たちはどう対応していけばいいのか。リモートワークの定着で見えてきたニューノーマルと呼ばれる時代の働き方について語っていきたいと思います。

リモートワーク導入で変わった会議

新型コロナの感染防止策として導入された在宅勤務とリモートワーク。ネット環境があれば物理的に離れていても多くの業務が問題なくこなせることに気づいてしまった訳ですが、このリモートワークが多くのことを明らかにしました。

まず会議では声が大きいだけで中身が薄いオジサンが声の大きさや存在感を頼りにアイデンテティを保っていたことが明らかになりました。会議室での会議よりも発言者が注目を集めやすくなり、雰囲気や誰が発言したかよりも、何を言ったかという中身により関心が向くようになりました。

また、会議室での会議では同じ人ばかりが発言しがちだったのが、比較的意見のある人が発言するようになったのではないでしょうか。これはリモートワークを始めるまで分からなかった収穫だと言えるでしょう。

リモートワークでハッピーになった人

リモートワークを開始した4月ごろ、通勤時間がなくなりフルタイムで働けるようになったママはハッピーになりました。もともと短時間勤務制度を利用していたため、基本給が削られており働くママ達は低い給料で労働力を提供していました。働くママはダラダラと残業ができないため、そもそも時間内に終わらせる意識が高く、それでいてあたえられる業務量はそこらへんのおじさんとほぼ変わらず、安月給で時間当たりにすると多くの業務をこなしている優秀な層です。

その優秀なグループが、リモートワークのおかげでフルタイムで働けるようになり、より多くの仕事に取り組み、成果につなげている場面を見かけます。給料も上がり、成果も残し、充実感が増し、家族との時間も確保する。これはハッピーなことでしょう。

一方、夫もリモートワークの場合、一つ屋根の下にいる時間が長くなりすぎてストレスという声も聴きます。リモートワークと言う働き方を活かすにはAll or Nothingではなく、業務や働く人によって柔軟に(例えば木曜日と金曜日とか)出社とリモートを使い分けられるような制度にしていくことが重要になってくるでしょう。

リモートワークでアンハッピーになった人

リモートワークでアンハッピーになった人には大きく分けて二通りがあると思います。一つは目の前に部下がいないと管理ができない管理職、もう一つは貢献度が低くて定時まで時間を持て余している人です。

目の前に部下がいないと管理ができない管理職

まず目の前に部下がいないと管理ができない管理職ですが、これはそもそも部下の管理ができていなかったか、元はできていたのだけれども姿が見えなくなったことによって管理する方法が分からなくなってしまった人に分けられると考えられます。

そもそも部下の管理ができていなかったというのは、PCに向かって座っていることを働いていると見なしているだけでレベル低すぎなので論外です。もう一つの姿が見えなくなってしまったために管理ができなくなってしまったグループは相当数いるように見受けます。部下からの信頼が厚い課長なども、このグループに多く入ってしまっている可能性があります。

部下の机を見るだけでその部下が忙しいのかそうでないのか、困っているのか、順調なのかが分かると言う話を聞いたことがあります。普段から観察していれば机の整理整頓具合から部下の状況が見えてくるのだそうです。あるいは直接会えば顔色も分かるし、声の調子もわかるし、ちょっとした会話でフォローもできます。こういった五感を使った情報収集で部下をフォローしていくことは非常に重要で効果的である事に異論はありません。

しかし、これからはそれだけではこれからの時代はダメなのです。不十分なのです。ここがリモートワークでアンハッピーになってしまった人が乗り越えていかねばならない部分だと思います。

貢献度が低くて定時まで時間を持て余している人

悲しいかな優秀な人には仕事が回り、仕事ができない人は仕事を外されますますヒマになっていくというスパイラルが存在します。これは断ち切るべき負の連鎖ですが、リモートワークによる見える化がこのスパイラルを断ち切るきっかけになるかも知れません。

どこの部署にも一人か二人ぐらいは何もしていない人、何をしているのか分からない人がいるものです。リモートワーク導入前は周囲の人に話しかけたり、パソコンをいじったりして定時まで時間を潰していることができました。それがリモートワークをしているがために話し相手がいなくなり、人に話しかけることによって時間が潰せなくなりました。

パソコンをいじる時間の潰し方の方は健在でしょうか。そもそもパソコンをいじっているというのは作業内容が周囲から分かりづらいので、仕事をしているように見えるという時間の潰し方でした。しかし、リモートワークでは見た目に見える勤務態度より成果物、実績により注目が集まるようになり、実際はパソコンをいじって遊ぶ時間の潰し方はむしろしづらくなりました。

さすがに業務時間中にゲームをしたり漫画を読むわけのは気が引けるので、自宅でPCの前に座ってはいるものの、時間が過ぎるのを待つだけ、という非常に悲しい状況になっています。自分でも薄々気づいていた自分の存在価値の低さというモノに、正面から向かい合和無ければならなくなってしまったのです。

ここが大事なタイミングで、「このままじゃいかん!」と思って新しいスキルを身に付けたり、自分から仕事を取りに行くような姿勢にかわっていけば大いに状況は変わっていきます。こういった転換ができるかどうか、リモートワーク導入を自分が変わるきっかけにできるかどうかがこの層の鍵となることでしょう。

成果主義ではないがより実績が重要になるニューノーマル時代

ニューノーマルな時代は成果主義とは言わないまでも、これまでに比較すれば、より実績に注目した、努力や成果が報われやすい時代と言えそうです。従業員の間で待遇や評価に差が付きやすくなるかも知れませんが、努力が実績が評価される方が公平で納得感があるのではないかと私は思います。

だからこそ、成果至上主義に陥らず、ギスギスした人間関係を防ぐ為にコミュニケーション能力を高め、職場の雰囲気作りを大切にし、人間性が問われる、そんなことが大事になっていくと思います。仕事の成果がより重視される時代は人間性も問われる時代になるのです。

流れていく仕事

リモートワークに後ろ向きな人の傾向とわたしが捉えていることは、彼らが自分が担当している業務は実績をアピールしづらい、と思っているという事が挙げられると思います。

たとえば工場のバックオフィスでは生産管理や品質管理業務があります。生産管理や品質管理業務は新商品開発や営業部門に比べてアピールできるような実績が残しにくいという考えです。

製品を製造するには現場に行く必要がありますが、生産計画を立案するのに作業現場に行く必要はありません。しかし、実際は生産計画も効率良く行う方法を考えたり、品質管理も管理手法を工夫したり品質向上のための生産工程の改善提案をしたりと、付加価値を高める仕事は可能です。

日常業務とは離れた視点を持ちつつ、日常業務の中で工夫をし続ける。このような姿勢で仕事に取り組むと自ずと流れていく仕事のように思えた業務も改善のタネがある事に気づきます。このような姿勢で取り組むこと自体がより重要になってくると思われます。

一番大切な事は結局、気持ちの持ち方

ニューノーマルな時代には実績がより重要なファクターになることを述べてきました。そのためには業務に改善のタネがあると信じて取り組むことが大切な事についても説明しました。

まず、改善のタネがあるという姿勢を持った上で、実績を残していきます。有効な改善を行う為には日々の努力、とりわけ新しい技術や知識を身に付けることが大事です。注意点を一つあげるとすれば、せっかく自己啓発をしても勉強の成果を仕事に活かしている人はごく一握りであると言うことです。

勉強していると言うことは非常に自己肯定感につながりやすく、それだけで満足して終わってしまいがちです。せっかく勉強したのだから業務に活かさないともったいない。そういった意識で勉強にも業務にも取り組むと良いでしょう。

そして、改善と言う事は多かれ少なかれ従来のやり方を変えたり辞めたりすることです。慣れ親しんだやり方を変えることは抵抗があります。抵抗がある事をわざわざ勉強してやるわけです。その意味で、変化を恐れない姿勢が大切だと言うこともできます。



最後の方は精神論になってしまいましたが、このあたりが本質だろうと思っています。昨今、人口に膾炙しているDX(デジタルトランスフォーメーション)も結局デジタルな技術より、そういうモノに心理的抵抗なく取り入れられるかという心の壁だけの問題だったりします。

結局マインドセットが大切だということです。


Excel一択の職場

あまりにもExcelに頼りすぎているのではないか。

最近そう思うことが多くなってきました。

表やテーブル、データベースは言わずもがな。
集計や分析、報告書に至るまで何でもかんでもExcelに頼っているではないか、と。

それだけExcelが便利で万人受けする素晴らしいアプリケーションなんですね。
ただ、業務改善という観点で見てみると、また別の景色がみえてくるのです。

あまりにもExcelに頼りすぎていて、気づかない、あるいは見て見ぬフリをしてしまうことがあります。

それは、世の中には便利なソフトがいくらでもあると言うことです。

その業務、本当にExcelで取り扱うのがベストですか?


もちろん新しいアプリケーションを勉強するのは学習コストが掛かりますし、職場にいろいろなアプリケーションがあふれていればメンテナンスもおぼつかなくなってしまうでしょう。しかし、本当にExcelで取り扱うことがベストなのか、と言った視点すら失われているように思うのです。

Excel一択になっているんですよね。

Accessだってあるし、Power BIだってあるし、MicrosoftにこだわらないのであればGoogleスプレッドシートもある。
Excelがダメというわけではないけれど、それ以外の選択肢もあるよ、と言う事を忘れないようにしたい者だと思います。

業務改善は何かを変えることですからね。使っているアプリケーションを変えるという視点も忘れないようにしたいものです。

KPI設定のためのROAの考え方

KPI(重要業績評価指標)を適切に設定することが経営目標の達成につながります。今回は経営目標としてメジャーなROAの考え方を解説します。

経営指標とは

今回はROAという経営指標を取り上げますが、その前にそもそも経営指標とは何かについて簡単に説明します。

経営指標とは会社の状態を表す財務指標

経営指標とは会社の状態を示す指標です。大きく分けて、収益性、効率性、安全性の3つがあります。平時であれば収益性や効率性が求められ、不況下などでは安全性が高い方が好まれます。3つの切り口の概要を簡単に述べると以下のようになります。

  • 収益性

手持ちの資本でどれだけの利益を上げられるか。

  • 効率性

手持ちの資本でどれだけの売上を上げられるか。

  • 安全性

どれだけ経営が安定しているか。現金収入が途絶えた場合にどれくらい持ちこたえられるか。

このように企業の状態を表す指標となっており、株主はこのような指標を分析することで投資先を決めるなどしています。

経営指標は経営陣だけのモノではない

この解説記事で最も大切な事に触れます。それは、前項で述べたような経営指標は会社幹部や株主などだけのモノではない、と言う事です。一人一人の会社員が作っているモノだという事です。

このことがピンと来ないと言う事は、会社の目標である経営指標を適切に部門や個人の目標にブレイクダウンできないと言う事です。以下、会社の経営指標を部門や個人の目標に適切に落としていく方法について解説します。

KGIとKPI

会社で経営方針に挙げられるような経営指標のことをKGIと言います。KGIはKey Goal Indicatorの略で、重要目標達成指標を意味します。例えばROA5%以上を達成すると言う事が経営目標、安定的に利益を上げていく体制の構築が経営方針と言う事であれば、KGIはROA5%と言う事になります。ROAそのものの説明は次項で行います。

一方、KPIとはKey Performance Indicatorの略で重要業績評価指標の意味です。KPIが意味するところはKGIのブレイクダウンです。ROAは当期純利益を総資産で割った値です。よって、ROAを高めるためには純利益を増やすか、総資産を減らすかのどちらかが有効であると言えます。分子に着目すれば、純利益を増やすことが有効なので、売上を増やし、経費を減らすことがROAを高める事につながります。

そして、さらにブレイクダウンすると自部門が担当する製品がAだとするとAの月間販売数量を高めたり、原材料費率を下げたりと言うことがROAに貢献することとなります。個の部門ごとに落とし込んだ月間販売数量や原材料費率がKPIに当たります。

つまり、KGIを部門ごとの目標までブレイクダウンしたものがKPIであると言えます。

ROAとは何か

ROAとは当期純利益を総資産で割った値で単位は%です*1。ROAというKGIをKPIにブレイクダウンするに当たり、ROAの意味合いを解説します。

ROAの定義と捉え方

ROAは当期純利益を総資産で割る
ROAの定義
例えば何かのお店を開くとします。開店資金としてコツコツ貯めた貯金300万円と銀行から借りた200万円の合計500万円が手元にあります。この500万円でパソコンや机、電話などを用意し、また当座の賃金をまかなうとします。この500万円が総資産です。つまり、自分で出資したお金*2と借りてきたお金の合計が総資産となります。

そして、年間50万円の純利益を上げる事ができればこれが分子となり、ROAは10%となります。純利益は自分への給料や仕入れ値、水道光熱費を除いた利益から税金を払って残った本当に手元に残ったプラスアルファのお金*3です。

ROAの定義の式を書き換えると以下のようになります。

ROAの意味合い
売上高をかませて収益性と効率性で表現する

ROAを2つの指標のかけ算で表現しました。前半部分は売上高に対して当期純利益がどれくらいかという指標なので収益性を表しています。どれくらい儲かるビジネスをしているかと言う事です。

後半部分は売上高を総資産で割っています。これは、用意した手元資金の何倍の売上を上げられているかと言う事を意味しています。沢山お金を使って高級パソコンと社長の机で作業して100万円の売上を上げるより、最低限の機能のパソコンと机で100万円の売上を上げる方が、売上が同じなら資本の使い方の効率が良いと言うことになります。よって後半部分は経営の効率を示しています。

このようにROAは経営指標の3つの切り口である、収益性、効率性、安全性のうち収益性、効率性の2つに着目した経営指標であると言えます。

ROEとの関係

ニュースではROAよりROEの方を良く聞きます。これはROAの計算式の分母である総資産を純資産にしたモノです。銀行から借りてきたお金は含まず、自分で用意したお金と株主から集めたお金だけを分母にしています。株主は自分が出資したお金がどう使われているのかに関心があるため、銀行からの借り入れを抜いた分母である純資産の方が都合が良いのです。

しかし、そうすると銀行から借り入れをどんどん増やして売上を拡大させ、株主からのお金は余り集めないようにすればROAは同じか下がっているのにROEは高くなると言うようなことが起きえます。私見ですがこれは健全ではないと考えます。よってこの解説記事ではROAを経営指標として取り上げます。ROAが上がった結果としてROEも上がると言うのが健全だと考えているからです。

ROAをKPIにブレイクダウンする

それでは具体的にROAをKPIにブレイクダウンしていきます。今回は製造業や飲食業など幅広い業種で関連するロジスティクスにおけるKPIにブレイクダウンしていきます。

ロジスティクスKPIに落とし込む例

もう一度ROAの式を掲げます。

再掲:ROAの計算式

ROAを求める計算式の分子に利益率があります。利益は売上と経費の差で計算できます。売上高は価格と売上数量の席で表せます。これをさらにロジスティクスKPIに落とし込むことを考えます。すると、この部分はサービスレベルと物流コストに分解されます。サービスレベルとは顧客要求に対して欠品を起こさずに商品が提供できる割合です。欠品を起こすと売れないので売上高に影響を与えるという側面からの指標です。

利益をKPIに分解していく

販売機会は顧客との接点を高める事ですので、特売や広告宣伝などの販売戦略立案部門によるKPIとなります。例えば、来店者数や入場者数といった指標です。サービス率はその後、売上に結びついた率です。満席でチケットが販売できなかったり、在庫が足りないとサービス率は下がることになります。在庫との兼ね合いもありますので、サービス率は高ければ高いほどよいというよりは、95~97%を目指すなど、ある程度の高さの範囲内にある事を目指します。100%にしようとするととても沢山の在庫を構えなくてはならなくなり、賞味期限などがある商品の場合は廃棄が大量になってしまう可能性があります。93%がいいのか、95%がいいのか、97%がいいのかは経営方針によります。

つぎに経費の部分に着目します。ロジスティクスに関する経費は様々なものがあります。物流コストとして主なKPIは以下の4つが挙げられます。

  • 輸送コスト
  • 倉庫保管コスト
  • 荷役コスト
  • 包装コスト

これらが各部門でKPIとなりうる指標です。各部門がKPIを達成する事によってKGIであるROAに貢献するイメージがわくでしょうか。さらにここから個人レベルの目標にブレイクダウンすることで社員のモチベーションにつなげていきます。

輸送コストであれば、緊急出荷比率や需要予測精度と言った指標が影響するのでそれぞれの担当者の活動が指標に現れていくことが分かります。このように自分の担当している業務の一つ一つが業績に影響し、会社に貢献していることがわかるようなKPIの設定をすることが重要です。

KPI設定のためのROAの考え方まとめ

この記事の内容をまとめると以下のようになります。

  • KGIをブレイクダウンしてKPIにする
  • KGIは経営方針となるような目標指標で、例えばROAが挙げられる
  • ROAは利益と総資産で計算される
  • 利益に関しては売上に関するKPIと経費に関するKPIに分解する
  • ロジスティクスKPIなど部門ごとのKPIに落とし込む
  • 部門KPIはさらに従業員一人一人の目標値や業務内容が影響を与えるレベルまでブレイクダウンする

適切なKPIを設定して、従業員一人一人が業績に影響を与える実感がわくような目標設定を行う事で、業績に貢献していきましょう。

*1:分母は経常利益とする場合もあります

*2:出資者が自分だけの場合。株主からお金を集めた場合はそのお金もここに含まれます。

*3:現金とは限りません。未振り込みのお金や権利なども含みます

自己啓発 10選|自分の市場価値を高める

新型コロナウィルス拡大防止のための在宅勤務導入により通勤時間が浮いた人も多いはず。このような時こそ浮いた時間を有効活用してスキルアップを目指し、コロナ後の世界に備えましょう。実際に私が取り組んだことのある自己啓発を紹介します。スキルアップで自分の市場価値を高めましょう

目次

プログラミングスキル

自動化からデータ分析まで業務でスキルが生かせる場面が激増するのがプログラミングです。自分の職場にあったプログラミング言語を選択することで、活躍の場面を広げていきましょう。どのプログラミング言語を学ぶかを選ぶポイントは、有名であるとか、人気があると言う事に惑わされない事です。自分の職場でどんな自動化をするのか、どんな分析をすれば役立つのかと言う視点で選ぶようにしましょう。プログラマーの平均収入ランキングを見ても仕方が無いので注意しましょう

1.VBA エクセル自動化の王道

VBAはエクセル作業を自動化するのにうってつけのプログラミング言語です。少し深く勉強すればパワーポイントへ図表を貼り付けたりメールを自動配信することなどもできます。Windowsを職場で利用していて、エクセルを使う業務が多い方はまず間違いなく身に付けて損はありません。また、VBAの大きな魅力として、他の多くのプログラミング言語と異なり入門レベルから実務で役に立てられるレベルまでの間に溝が無いために挫折しにくいことが挙げられます。

他のプログラミング言語だと、入門書は一通り挫折せずに終わったものの、実際に役立つモノが作れないと言う状況になりがちです。VBAの場合はエクセルブックというプログラムで動かす対象が目の前にあるので、これを動かす事で「実際に役立つモノが作れない」と言う状況にならないのです。

一冊目としてオススメなのが以下の本です。図表が豊富で見やすい2色刷となっています。この一冊で基本的な文法は網羅しておりエクセル作業の自動化に必要な技術を一通り身につける事ができます。

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2.Python 自動化からデータ分析までこなすオールラウンダー

Pythonは業務自動化からデータ分析まで非常に多くの事ができるプログラミング言語です。プログラミングの学習をしたことがない人に向けて注意を促したいことは、Pythonを学べば自動化もデータ分析もできると思ってしまうことです。それは、Pythonと言う言語が幅広く利用されていると言うことであって、あなたが自動化をしたいのなら自動化のためのPythonの文法、データ分析をしたいのであればデータ分析のためのPythonの文法を学習しなくてはならないと言うことです。考えてみれば当たり前の事ですが、どのプログラミング言語を勉強しようか迷っている段階だとここを勘違いしてしまいがちなので注意しましょう。オススメプログラミング言語比較○選みたいな記事を読んでいるとPythonを勉強すれば何でもできる様な気がしてしまうので要注意です。勉強したことしかできる様にはなりません。

私がお世話になった自動化とデータ分析の本を紹介します。退屈なことはPythonにやらせようについては関連記事に詳しくレビューを書いていますので併せてご覧下さい。

こちらのデータ分析本の入門書はPython 3 エンジニア認定データ分析試験という認定資格の主教材となっており、資格取得を目指す人にとっては必須の一冊です。プログラミングだけではなく、データ入手から分析結果の利用まで、データ分析の流れを解説した上で、それぞれのステップに必要な知識と技術を幅広く解説している良著です。ライブラリを活用したデータ前処理やscikit-learnを使った機械学習のプログラミングについても多くのページが割かれており、理解を深めることができます。是非とも読んで終わりにせず、実務で活用してスキルを高めていきましょう。

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【Python】日本語のPDFデータを読み込む|pdfminer.six
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3.GAS Google Appsを自由自在に操る

職場で主に利用しているのがMicrosoft Officeのソフトではなく、G SuiteやGoogle Appsの場合はVBAではなくGASが自動化に最適なプログラミング言語となります。GASはGoogleアカウントとインターネットが接続できる慣用さえあれば誰でもできるとても取り組みやすいプログラミング言語です。JavaScriptをベースにしているため、GASを勉強する事はJavaScriptの基礎を勉強をする事と同じなので一挙両得とも言えます。

また、VBAと同様、入門レベルの参考書から実務で役立つまでの間に溝がないのもGASの大きな魅力です。目の前にGメールやグーグルスプレッドシートといった具体的に動かしたいモノが目の前にあるからです。このため挫折しにくいプログラミング言語だと言えます。基礎文法から実務で使えるレベルになるまで1冊で十分なオススメ書籍を紹介しておきます。

データ分析力を身に付ける

Pythonの項でプログラミングによるデータ分析の紹介をしました。データ分析をより深く理解するのに有効なのが統計学と機械学習の知識です。

4.統計学 データ分析の基礎を鍛える

統計学で身に付けるべき事はデータの取り扱いにおける概念、考え方を学ぶ事です。難しい計算式を解く力が必要なのではなく、データをどういった方針で分析するのか、分析したレポートからどのような結論を導くことができるのかが大切なポイントとなります。ビジネスの実務においては予測や推定がより重視されますが、根拠に重きを置く統計学の基礎を押さえることによって、予測や推定に重みが出てきます。

ここでは製造業における安全在庫設定やマーケティング調査のデータ分析と言った実務に直結する統計学の基礎が中学レベルの数学のみで理解できる入門書を紹介します。この本は計算そのものよりも基本的な考え方をしっかり理解させることを重要視して執筆されており、「絶対に読者を挫折させない」という著者の熱い意気込みを感じることができます。その中でも標準偏差についてその意味するところをとても詳しく解説されているのが好印象でした。

中学数学レベルで解ける穴埋め式の練習問題で理解度チェックができ、挫折しにくい内容となっていてとてもオススメです。専門家を目指すのではなく実務で活用するならこの本一冊で十分です。

5.ディープラーニングG検定 流行に流されずに正しい知識を身に付ける

ディープラーニングと言う言葉は聞いたことがあるけど、具体的に何をしているのかは知らない、なんてことはありませんか。この際、具体的な考え方やAI、人工知能と呼ばれる技術の歴史、どのように実務に応用されているかを知っておきましょう。ディープラーニングは技術者を目指す人だけのものではありません。ビジネスでエンジニアと話す時や、仕事外でもネット上のサービスを利用する時など、その背景にあるアルゴリズム(問題の解き方)を理解しておくことによって、人工知能と呼ばれる技術の課題や気をつけることなどがわかり、より正しくその果実を享受できるようになります。

私がディープラーニングG検定に合格するのに利用した2冊の本を紹介します。

一冊目は参考書です。次に紹介する問題集を解いて分からないところをこの本で調べる、と言う使い方をします。

この問題集で解けない問題が無くなるまで繰り返しました。5週目くらいですべてとけるようになりました。

資格取得を目指すのではなく、知識を入れるだけで十分という人は一冊目の参考書のみで十分です。

仕事と生活で不自由しない語学力を身に付ける

6.英語

もはや英語は必須のスキルです。メールやチャット、ネットなど書かれた英語は翻訳ツールに掛けるなどすれば良いですが、対面では聞き取りができ、なおかつ自分の意見が言えなければ話になりません。私で英語で生活、仕事ができるレベルになりましたが、具体的な書籍はここでは紹介しません。なぜなら話せるようになるために必要な事は本を買うことではないと考えているためです。

英語で会話ができる様になる為には聞き取りができる様になる事が大切です。その練習方法について解説します。まず洋画や動画のワンシーンを英語字幕ありで見ます。次に、発音、身振り手振り、表情を超マネしてしゃべるだけです。超マネすると言うところがポイントで、恥ずかしがらずに抑揚や表情までマネします。発音が一番大事です。あなたが聞こえたようにしゃべりましょう。ポイントは字幕を読むのではなく、聞こえたようにしゃべることです。

例えば、"I go to school."を読むと「アイ ゴー トゥ スクール」となってしまいます。そうではありません。「アゴルスコー」のように聞こえたらそう言いましょう。これを2~3回繰り返すと、なんと!字幕なしでその場面が聞き取れるようになっています。これをいろいろな場面、いろいろな洋画や動画でやります。字幕ありで見られる動画なら何でもイイです。

字幕を読んではいけないのに、字幕ありで練習する理由は「こういう文はこう聞こえるんだな」と覚えるためです。何を言っているか分からないのに言い方をマネするのはムダで、"I go to school."は「アゴルスコー」と聞こえるんだな、と覚えると言う事が大事です。こういう聞き取れる文のストックを増やしていく作業が
リスニング力に直結します。というか、この聞き取れる文のストックの量がリスニング力そのものです。

ビジネスと直接関係ない知識で教養を磨く

これまではビジネスの場面で直接役立つスキルや知識の自己啓発について紹介してきました。ここからはビジネスに直接役立つ知識やスキルではなく、知識を身に付けることで判断力を磨くというアプローチの自己啓発について紹介します。

7.世界遺産検定 地球と人類の歴史を学び世界平和に思いを馳せる

世界遺産はユネスコが顕著な普遍的価値を持つと認められた文化財や自然環境のことです。なぜ世界遺産として認定するかというと、素晴らしい自然や人間の歴史的な営みが分かるものは、その国だけのものではなく人類共通の大切な宝物なのでみんなで保護していくためです。このように世界中の人々で貴重な財産を守ることによって、他の国の文化や自然を理解する事につながり、その相互理解が世界に平和をもたらすという考え方です。

世界遺産の中には奴隷を収容していた施設や原爆ドームのように、人類が忘れるべきではない教訓とすべき文化財もあります。このような世界遺産に触れることで人類の営みや大自然に思いを馳せることは重要な教養と言えるでしょう。


テキストは学校の教科書のようで懐かしく、楽しみながら読み進めることができます。検定対策としては問題集で出た内容をテキストで調べると言う使い方になりますが、読み物として普通に読んでも楽しめる内容となっています。このテキストが秀逸な点は「日本の遺産」や「古代ギリシャとヘレニズム」のように世界遺産をグループ化していることです。これは試験範囲がそうなっている事と対応していますが、理解する上で関連する世界遺産を一緒に頭の中に入れることで覚えやすく理解も深まり、とても良いと感じました。

私は2級テキストと問題集しか持っていないのでここでは2級のテキストと過去問題集しか紹介しませんが、他にも3級と4級のテキストと問題集があります。

8.世界現代史 現在のビジネス環境につながる近代以降の一連の流れを知っておく

学校の教科書といえば、山川出版社。ザ・教科書といった感じの本で、高校時代を懐かしく思い出しながら読めます。社会人としては近代以降の歴史の流れを一通り押さえておくべきです。各国で耐えない紛争や民族のルーツ、宗教、経済、戦争について帝国主義時代以降の流れを押さえることができます。世界史はとても範囲が広いため、この教科書では「近代世界システム論」という考え方を使って世界史を論じています。簡単に言うと世界の中心がどこにあるかをみつけ、その世界の中心がどう移り変わっていったかを追っていく、という感じです。

9.論語 礼の作法、処世術を弟子に説いた孔子の教えを学ぶ

当たり前だと思うことから、なるほどと思うことまで弟子が書き残していった孔子の名言集です。論語研究として相当有名な方のようで、素人が論語を学ぶのであればこの一冊が良いのではないかと思います。本文に続けて書き下し文、訳が付いており、時々注釈が入っています。注釈には「~と訳されている場合があるかが、筆者は~だと思う」というような事が書かれており、この本の訳が唯一絶対の正解などではなく、論語の翻訳自体が困難な作業である事がわかり、そのこと自体も勉強になりました。

10. 哲学 古今東西の哲学を歴史の流れとグループ分けによって概観する

ビジネスマンたるもの哲学書の一つぐらい教養として知っておきたいところ、と思って買った本が「読まずに死ねない哲学名著50冊」です。哲学書を読みこなすのは相当難しい作業なのですが、それを簡単に解説している哲学カタログのような本です。

時代と共に各哲学者が分類されており、哲学の歴史概論を知る上でもとても参考になりました。その意味では冒頭にある「哲学歴史チャート」だけでも大いに価値があります。難解な哲学書から日常に役立つエッセンスを抽出し「ようするにこういうことだよ」と分かりやすく解説してくれる非常にありがたい一冊となっています。

自分の市場価値を高める自己啓発まとめ

ビジネスの現場で直接役立つスキルや知識の自己啓発、知性と教養を磨く自己啓発の2つの自己啓発を紹介してきました。興味を引く自己啓発はありましたか?

ネットにあふれる大量の情報や不安定な経済、パンデミック、崩壊しつつある終身雇用など、これだけは大丈夫と言うものがない不安な時代だからこそ、知識を得て、スキルを身に付け、自分を磨き続けることで市場価値を高めていきましょう

VBA開発最大の弱点|属人化への対応方法

VBA自動化やデータのチェックといった業務改善ツールを、非エンジニアでも簡単に開発することができる便利なプログラミング言語です。非エンジニアの事務職にとっても取り組みやすく非常にありがたい存在です。VBAでエクセル作業を自動化する事は作業時間の短縮だけでなく、作業品質の安定化にもつながります。今回は、その死角なしに見えるVBAによるツール開発の弱点、属人化への対応方法を解説します。

目次

VBAの弱点、属人化に打ち勝つ

今回はVBAの弱点である属人化に打ち勝つ方法を解説します。VBAで自動化を行うと複雑なエクセル作業を誰でも簡単に行う事ができるようになります。そしてミス無くなります。そのため、一見するとVBAで作業を自動化すると属人化の逆である、作業の標準化が進んだように見えます。

確かに、エクセル職人に頼らずに誰もが同じように短時間で同じ作業成果を出せるようになるのですから、標準化が進む面があります。しかし、このブログでは「VBAで作った便利ツールそのものが属人化しているのではないか」という見方から、ツールを開発することによって開発者に依存するタイプの属人化に対応する方法を解説してきます。

VBAは事務職が自己啓発程度の勉強で十分身に付けられるプログラミング言語

VBAはちょっとした自己啓発程度の勉強程度でも気軽に身に付けられるプログラミング言語です。始めはこのブログのような初心者向け講座で感覚を掴み、まずは一つ小さくてもいいのでツールを完成させることが大事です。取りかかることは簡単である一方で、ある程度の継続、ある程度の経験は必要となります。それさえできれば必ず身につける事ができますので頑張って行きましょう。

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ちょっとした便利ツールを気軽に作れると言うメリット

ほぼ全てのプログラミング言語において、勉強を始める前に環境構築という作業が必要です。環境構築というのはプログラムを書いたり実行するのに必要な設定を行うと言う事です。通常、この環境構築作業は非常に重たいソフトをインストールしたり、個別の設定を行ったり、バージョンが変わるたびにアップデートしたりと面倒です。面倒なだけでなく、初心者にとっては難易度が高い作業で、勉強を始める前の段階で挫折してもおかしくないと思います。

一方で、エクセル VBAはMicrosoftのエクセルさえインストールされていれば、環境設定は既に済んでいると言っても過言ではない状況でいきなりプログラムを書き始めることができます。これは非常に大きなメリットです。また、インターネットや書籍など日本語の解説情報も非常に充実しているため、学習しやすい環境が整っていると言えます。

これで、もし日常業務にエクセルが多用されているとすれば、これはもうVBAを学ばない手はありません。このように誰でも気軽に学ぶ事ができ、作業の効率化が図れることがこの言語のメリットと言えます。

気軽に開発できるからこそ陥るデメリット

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このようにエンジニアに限らず誰でも気軽にプログラミングに取り組むことができると言う大きなメリットがもたらすデメリットに目を向けてみましょう。

プログラミング入門書に書かれていない大切なこと

VBAではエンジニアでもなくても、一般企業の事務職の方でも自動化ツールが開発できるプログラミング言語です。つまり、自分で開発した便利ツールは商品として販売するわけではなく、自分だけで使う前提です。もしくは自分だけで使う所から始まり、実力が付いてきて周囲の人に配布している場合もあるでしょう。いずれにせよ、自分だけが使う便利ツールがスタート地点である事に変わりはありません。

ここで入門書には書かれていないとても大切な事について触れます。

それは、人に使ってもらうとなるとVBAと言えども難易度が大きく変わってくると言う事です。例えばファイルを取り込むという簡単な操作一つにしても、あなたが想定したボタンと違うボタンをユーザーが押すかも知れません。取り込むデータのヘッダーなどデータの形も変わるかも知れません。自分だけが使うツールなら想定外の操作に対応する必要も無ければ、仕様の変更が必要であればプログラムを手直しすれば済む話です。しかし、人に使ってもらうとなるとあらゆる操作に対してエラーが出ないように作り込む必要がありますし、仕様変更の必要が発生したら「暇ができたとき」ではなくユーザーの都合に合わせて速やかに改修して最新版を配布しなくてはなりません。

つまり、ツールというモノは人に渡すと言う前提に立った途端に開発者に依存する事になるのです。ツールによって一見標準化された業務が実は開発者に属人化してしてしまうとはこのことです。これまで個別の業務担当であったユーザーに依存しなくなった代わりに開発者に依存するようになってしまったわけです。考え方によってはプログラミングスキルがある人しかメンテナンスできないという意味でよりたちの悪い属人化と言えるかも知れません。

属人化に打ち勝つ方法

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VBA開発の最大の弱点である属人化に対応する前に認識しておきたいことがあります。それは以下の2点です。

  • 開発者に依存すると言う事はプログラミングスキルのことなので、プログラミングができる人を増やせば良い
  • プログラムの中身を明確にしておけば、プログラムさえ書ければ再現やメンテナンスができる

つまり、開発者に依存するので属人性が高まるという話は、属人化の話の1つめのスキルの面しか語っていないと言う事です。「わたしはプログラミングなんかできない」と思っているとここで思考が停止してしまいます。ここで思考回路が停止しては半分しか議論したことになりません。

2点目の、プログラムの中身を明確にしておけば、ツールの改修が必要になったときにメンテナンスができる事になります。話はかなり単純になりました。あとはこの2点への対応を行えば、VBAツールによる属人化への対応ができ、安心して自動化などの業務改善を進めることができる様になります。

複数の開発者を育成する

そもそもVBAは非エンジニアの事務職でも取り組みやすいプログラミング言語でした。と言う事は、努力次第である程度までは誰でも身につける事ができるのです。できないとすれば、それは心理的に「わたしなんかにプログラミングなんてムリ」と抵抗があるだけに過ぎません。

自己啓発で自らスキルアップを図る週間のない人には業務としてVBAを学んでもらうようにします。読み書きができる人材を増やす事によって特定のひとりへの属人化を防ぐことができます。これはリスク管理の上に非常に大切な事なので、VBAツールがある部署においては少なくとも2人はVBA人材の確保をするようにしましょう。できれば3人以上が望ましいところです。

開発ドキュメントをそろてプログラムの中身を明確にする

開発ドキュメントには様々な種類がありますが、非エンジニアが作るちょっとした便利ツールレベルであれば要求仕様書があればほぼ大丈夫です。要求仕様書とは、そのツールで実現したい内容を明確に定義したドキュメントです。これがある事により、そのツールを紛失してしまったり、データの仕様が変わってしまっても新たなツールを新たに開発して元のツールを再現したり、元のツールを改修したりすることができる様になります。

開発ドキュメントについては会社員がVBAで自動化するのに必要な開発ドキュメント3点で詳しく解説しているので詳細はリンク先をご参照下さい。

VBA 属人化への対応方法まとめ

この記事の内容をまとめると以下の通りです。

  • VBA事務職でも取り掛かりやすい優秀なプログラミング言語
  • 業務の属人化を防ぐ一方、ツールそのものが属人化してしまう弱点がある
  • ツールの属人化を防ぐには、人材育成と開発ドキュメントの整備の2点を進める

最後に一点大事なことを付け加えます。それは、ツールの属人化さえ防ぐことができれば業務自体はツールで属人化を防ぐことができているので、真に担当者に依存しない強力な組織を構築することにつながるということです。VBAで業務改善を行う風土のある職場では、一歩進んで、ツールそのものをメンテナンスする体制の構築を進め、真の属人化フリーを目指しましょう。

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サプライチェーンを強化するロジスティクスKPIの立て方

業務を進めていく上で部門ごとの目標となるKPIのうち、経営課題のひとつであるサプライチェーンマネジメントを強化するロジスティクスKPIの設定方法を解説します。

目次

サプライチェーンを強化するロジスティクスKPI

サプライチェーンを強化するとは

サプライチェーンとは材料の調達から販売までの各拠点(ノード)とその間をつなぐ輸送(モード)を鎖に見立てた表現です。これを強化すると言うことは、より無駄のない拠点の配置と拠点間の組み合わせを構築したり、拠点の機能を設計したりすることに、よってコストの削減や柔軟な配送手段への対応、リードタイムの短縮、在庫削減と言った改善を行う事です。

経営指標に直接影響する施策もあれば、間接的な場合もあります。改善すべき経営課題に応じた施策を打てるようなKPIを設定すると言うことが、KPIを立案する上でのポイントとなります。

ロジスティクスKPIとは

ロジスティクスKPIとは、その名の通りロジスティクスに関するKPIの事です。ロジスティクスとはサプライチェーンマネジメントを遂行するための機能です。

サプライチェーンマネジメントとは、材料の調達から販売までの流れを管理し、改善するには一連の取り組みです。それを可能にするのがロジスティクスと言う機能であり、サプライチェーン上の各拠点の全体最適を実現するための機能です。例えば倉庫を統合したり分割したりと言った事が考えられます。

ロジスティクスKPIの立て方

KPIは経営指標を各部門にブレイクダウンした指標ですから、まずは自部門が会社の経営方針のどの部分にどのように貢献していくのかを決める必要があります。

この段階で会社の経営方針と関係の無いKPIを選択してしまうと、従業員の業務活動の結果が業績に反映されず、貢献度がわからないと言うことになってしまいます。ここで、経営指標とKPIとの関連付けをしっかりと行うようにしましょう。

具体的な手順は下記のようになります。

  1. 会社方針やKGI*1を確認し、貢献する方向性を決定する
  2. KGIをKPIにブレイクダウンする
  3. KPIを達成するためのアクションを策定する
  4. 策定したアクションがKPI達成に繋がり、KGIに影響を与えるか確認する
  5. 自部門や特定の部門以外への関係者との連携を行う

ロジスティクスKPIを立案するに当たっては、時部門や特定の部門だけでなく、関連する組織全体との連携が必要となります。サプライチェーンマネジメントはサプライチェーン全体の最適化を図るためです。サプライチェーンは部分部分に着目すると利害が対立する場面が多々あるため、全体最適を図るにはKPI設定の意図について関連部門と合意をする必要があります。

ロジスティクスKPI設定の流れがイメージできたのではないでしょうか?

ロジスティクスKPI設定の失敗

ロジスティクスKPIの設定に失敗するパターンを確認しておきます。

  • 設定したKPIがKGIと関係ないため、目標を達成しても成果が経営指標に影響しない
  • KPIとKGIの関係が分かりにくいため、従業員のモチベーションが上がらない
  • KPIから実務に落とし込むことができずないため、従業員がKPIを自分の数字として捉える事ができない
  • 全体最適ではなく、部分最適の指標をKPIにしてしまっている

計画段階での失敗から従業員への落とし込み、関連部門の調整と言ったあらゆる面を考慮して始めてサプライチェーンを強化するロジスティクスKPIを立案することができます。

サプライチェーンを強化するロジスティクスKPIの立て方まとめ

この記事の内容をまとめると下記の通りです。

  • 「サプライチェーンを強化する」とはより無駄のない拠点の配置と拠点間の組み合わせを構築などを通して、経営改善に寄与すること
  • ロジスティクスKPIとはサプライチェーン上の各拠点の全体最適を実現するための機能であるロジスティクスに関するKPIで、全体最適を目指した目標設定を行う事が重要
  • KPIの設定に失敗しないためには、立案から部門の従業員への落とし込み、関連組織との調整が必要

全体最適に気を配ったロジスティクスKPIを立案するようにしましょう。

<関連記事>

*1:Key Goal Indicator:重要目標達成指標。会社全体の目標数値

結果を出すKPIの考え方

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結果を出すKPIの考え方について解説します。

目次

結果を出すKPIの考え方

結果を出すとは

結果を出すKPIの考え方と題して解説をしていきます。まず、結果を出すとpは具体的に何かを定義したいと思います。ここでは、結果を出すとは、経営指標の改善に貢献することを意味します。経営を評価するには、財務諸表を確認します。その財務諸表に現れるような貢献をする、と言うことがここでいう、結果を出すという意味です。

財務諸表には下記の3点があります。

  • 損益計算書
  • 貸借対照表
  • キャッシュフロー計算書

例えば損益計算書であれば、売上と経費の関係がわかるため、利益率に関する指標が考えられます。会社の方針として、営業利益率という利益を向上させることが目標であるならば、その利益に貢献するために自部門はどの商品で売上を上げればよいのか、どの経費を下げればよいのか、と言うことを考える必要があります。そしてどの商品でどれくらいの売上を上げるのかという目標、どの経費をどこまで下げるのかと言ったような目標を立て、達成していくことが結果を出すということです。

この目標となる部分をKPIと言います。後程詳しく説明します。

KPIとは

KPIとは、Key Performance Indexの略で、重要業績評価指標の事です。簡単に言うと部門ごとに目標とする数値の事です。このKPIは行き当たりばったりで決めるべきものではありません。会社の方針と整合の取れたものに設定する必要があります。会社の方針とは、例えばROEの向上であったり、税引き前利益率の向上であったりします。ROEを上げるために、自分門は何をするのかという視点で、ブレイクダウンした目標を立てます。この目標がKPIです。

一方、ROEや税引前利益率といった会社方針となるような経営目標の事をKGIと言います。KGIはKey Goal Indicaterの略で、重要目標達成指標の事です。この関係を図にすると以下のようになります。

KPIを達成することによってKGIを達成することができる
KGIとKPIの関係

税引前利益率5%を達成するというKGIが会社方針として定められているとします。それでは何をすればKPIを達成できるかと言うと、売上を上げつつ経費を抑えればよいことになります。所属している事業部がAという製品を生産しているのであればAの販売数量が目標であるKPIとなります。材料を調達している部門であれば、原材料費率を下げることがKPIとなります。これらのKPIが直接影響するのは粗利益ですが、粗利益に貢献していることは税引前利益にも貢献することになります。このように、KGIの達成に貢献するように立てる目標がKPIです。

KPIの設定方法

KPIという言葉が定義できたところでKPIの設定の手順について具体的について考えていきましょう。

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KPIの設定手順

KPI設定の具体的な手順は下記の通りです。

  1. 会社方針となるいくつかのKGIからどのKGIを達成したいのかを部門のトップが決める
  2. KGIを達成するのに必要な要素を抽出し、列挙する
  3. 自部門に関係のある要素を選択し、KPIとして目標値を仮設定する
  4. 目標値を達成するための具体的な施策に落とし込む
  5. 設定した具体的な施策が実行可能なものか、無理のないスケジュールになっているかを確認する
  6. 実施可能性が著しく低かったりスケジュールに無理がある場合、追加施策の検討を考える(ここでKPIが複数になっても構わない)
  7. KGIとKPIと具体的な施策の関連性がわかりやすく連携されているかを確認する
  8. 担当者が具体的施策を実施したときに、自分の仕事がKPIに影響を与えている事、KPIがKGIに貢献していることが実感できるかどうかを確認する
  9. 実感できていなければ別のKPIを再検討する
  10. 部門のトップの承認を得て、KPIを最終決定する

これらの手順を経て、KPIを設定します。

税引前利益率がKGIであるならば、物流費用の削減という要素に着目することができます。そのように物流費用を削減するかは非常に多岐にわたる手順があるので、削減効果の大きい領域を抽出していきます。その結果、倉庫費用の削減と輸送費の削減が効果が大きければこの2つがKPIとなります。

KPI設定時の留意点

KPIの設定で失敗しないように確認しておくべき留意点を3点、説明します。

  • KGIとKPIの関係が明確でわかりやすいか

KGIとKPIの関係が明確でないと、KPIの達成がどの程度KGIに貢献したのかがわかりません。ひどければ、KGIに貢献していない意味のないKPIを追いかけていたということにもなりかねません。KPIを達成するとKGIに貢献する、ということが明確にわかるようにしておくことで、年度が終了したときに適切に反省をして、次の施策に活かすこともできます。KGIとKPIは関係性が明確でなければなりません。

たとえば、利益を達成するために売上をKPIにするのは明確でわかりやすいKPIです。同様に原材料費を削減するのもわかりやすいKPIと言えます。一方、販売数量を増加させるために広告宣伝費をKPIにするのは関係が明確なKPIとは言えません。広告宣伝費は増やすだけで売上が増えるわけではありません。よって利益率というKGIと広告宣伝費というKPI の関係は明確であるとはいえず、KPIとしては不適切です。

  • KPIと具体的施策の関係が明確でわかりやすいか

KGIとKPIの関係が明確であるべきなのと同様、KPIと具体的施策の関係も明確でなければなりません。実務担当者が行っている日々の業務がKPIに影響を与えなければ、実務担当者は何をしているのかわかりません。ひどければ、意味のない仕事をさせることになりかねません。

  • KGIからKPIのブレイクダウンの粒度が適切で実務担当者の行動が直接的にKPIに連動するか

KGIとKPIの関係の明確さに対する概念です。【利益を達成するために売上をKPIにするのは明確でわかりやすいKPI】と説明しました。では、現場の担当者が日々の仕事をこなす上で前者の売上目標をKPIにするでしょうか。Noです。自分の目標に落とし込むことができなければモチベーションにもつながりません。

部門ではもう少し細かくKPIを設定し、その後、実務担当者個人が部門のKPIを自分のものにブレイクダウンできる粒度にまで落とし込む必要があります。売上であれば、【製品Aの東京における今月の売上】というKPIを毎月たてれば、営業マンはそれを自分の日々の顧客訪問目標に落とし込むことができるでしょう。

結果を出すKPI

結果に結び付けていくには実務の担当者がモチベーション高く自分の目標を達成するために改善を繰り返して実績を出していくしかありません。地道な作業です。魔法の杖はないのです。その地道な作業の中でメンバーがモチベーションを保ち、継続していける体制を構築する。それを支えるのが結果を出すKPIです。

ここで開設した手順で結果を出すKPIを設定し、業績向上に貢献していきましょう。

KGIからKPIのブレイクダウンの粒度が適切であるというのがこの意味です。

結果を出すKPIの考え方まとめ

結果を出すことができるKPIについてまとめると下記の通りです。

  • 結果を出すとはKGIに貢献する事である
  • KGIからKPI、KPIからKGIへのブレイクダウンは粒度が大切である
  • 結果を出すKPIとはメンバーの地道な作業を支えるものである
  • 魔法の杖はない

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作業手順を現場で作り直す|業務改善

業務改善と一口に言ってもその切り口は自動化生産性向上、品質向上など様々です。今回はあらゆる業務改善に関わる業務の作業手順と言うものについて考えます。なお、この記事は業務改善で手をつけるポイント25選のうちの、【作業手順を現場に作り直させる】を深掘り解説したものです。

目次

作業手順を現場に作り直させる

文書で定められた作業手順が守られていない実態

工場や倉庫現場、バックオフィスで行われる業務の多くには作業の手順が定められています。特にISO9001を取得している企業においては細かく作業手順が文書として保管されている場合があります。細かく手順が定められている場合、本当にその作業手順が現場で守られているでしょうか。

徹底されている現場ではもちろんきちんと実行されていますが、手順書が形骸化していて実際の現場の手順と手順書の手順が乖離している場合もあります。このことは作業品質の劣化や業務改善を図る際にネックとなってしまいます。なぜこのような手順書と実際の手順の乖離が発生するのかを考えてみましょう。

手順書と実際の手順に乖離が発生する理由

手順書に書いてある手順と実際の手順が乖離する理由のひとつ目は、手順書の手順に無駄があると作業者に思われていることです。もっと言えば、「面倒くさい」手順になっていたり、「必要性を感じない」手順になっていると言うことです。これは手順書が正しい場合もありますし、現場の感覚が正しい場合もあります。いずれの場合も作業者が「面倒くさい」、「必要性を感じない」手順になっていることに変わりはありません。

理由のふたつ目は、作業の前提やプロセス自体が変更になっているにもかかわらず手順書が改訂されていない場合です。この場合は手順書の改訂がタイムリーに行われていないという管理面での問題です。

バックオフィスではうまくいかない作業手順の作成

前項で挙げた手順書と手順の乖離はいずれの場合も現場が主導で作業手順を作成、改訂する必要があります。バックオフィスが作成すると現場からは手順の押しつけ感があるのと、どうしても頭の中の作業と実際の作業では乖離ができてしまうからです。また、作業の前提やプロセス自体が変更になった場合も、現場から手順書の改訂の必要性の声が上がってくるような風通しの良い現場環境を作っておくことによって、改訂漏れを防ぐこともできます。

本来、作業手順の変更と手順書の改訂はセットで行われるべきモノですが、このように風通しの良い職場にしておくことによって漏れを防ぐ体制にしておくことも大事です。

現場の知見を生かす作業手順作り

現場主導で手順書を作成するメリットは大きく、下記が挙げられます。

  • 現場の作業のムダや効率化の案は現場が一番よく知っているので、本当に有効な作業手順ができる
  • 自分で作った作業手順なので愛着がわき、手順を大切にする
  • 手順を作成すると言う経験を通してスキルが向上する
  • 手順が評価され、モチベーションにつながる
  • 常に改善を意識した業務遂行を行うようになる

手順書のムダに文句を言うくらいなら、文句ではなくちゃんと意見として提示しようと言う事です。そしてそれが妥当な内容ならきちんと審議、評価し、手順書に反映させて正式手順として取り入れる。そうすることによって、提案者にとってはモチベーションにつながりますし、常に改善の余地がないかと言った目で業務に取り組むようになります。この、きちんと耳を貸して採用し、評価すると言うところが人材育成の面においても効果を発揮します。

そのため、改善提案を評価するような仕組みを取り入れると良いでしょう。ただし、週に1回とか月に1回と言った様に改善提案をノルマ化すると押しつけられ感が出て、モチベーションは下がり、改善案を提出すること自体が目的となってしまいます。こうなると、本音ではないとりあえずの改善提案をひねり出すことに時間を使ってしまうため、むしろ逆効果です。自ら提案し、それが評価される土壌を醸成しましょう。誤って一度ノルマ化してしまうと、改善提案を強制する制度を廃止しても自ら改善する風土に戻すのは難しくなってしまいますので要注意です。

作業手順を現場に作り直させるまとめ

簡単にまとめると、下記の様になります。

  • 作業のムダは現場がよく知っているので作業手順は現場で改善する
  • 現場による手順の改訂は現場のモチベーションにつながる
  • 手順の改訂に携わった経験があると、日常の業務を常に改善の視点から捉えて業務遂行するようになる
  • 手順の改善の声が愚痴、不満としてではなく、改善提案として上がってくるような風通しの良い職場にする
  • 手順の改善提案を評価する仕組みを取り入れる
  • 改善提案をノルマ化すると、本音ではない改善提案をひねり出す事に時間を使ってしまい逆効果となる
  • 一度でも改善提案をノルマ化してしまうと、制度を廃止しても自由に改善提案を出す風土を醸成すること自体が困難となる

業務改善をボトムアップで行う事により、手順書を形骸化させずに生きた手順書として活用できる職場にしていきましょう。

<関連記事>

プログラミング|業務改善関連用語事典

プログラミングと言えばコンピュータが動作する指示を人間が分かる様にしたプログラミング言語を使って記述することです。ここでは業務改善のための道具という立場から見たプログラミングを解説します。

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目次

業務改善のためのプログラミング

早速プログラミングという作業を業務改善の立場から見てみましょう。ここで言うプログラムとはVBAやPythonのようなスクリプト言語を使って自動化ツールや特定の目的を達成する事ができるシステムの一部*1を作る事を指します。目的は業務改善です。

ゲームや基幹システムを作るようなプロのエンジニアが取り扱うプログラミングとはニュアンスが異なります。エンジニアが開発するプログラムは厳密な要件定義を必要とし、また、チームを組んで開発します。このような点も参考になる部分は取り入れるのが好ましいですが、業務改善においてはプログラミングは目的ではなく手段であるという立場を取ります。

かなりいろいろな事ができる

エンジニアのような基幹システムを作る事ができなくても、VBAやPython使う事ができれば実に様々なことができます。VBAでできる事はエクセルVBAでできることと限界|業務自動化からピアノ演奏までに詳しくまとめていますが、一部例を挙げると下記の様なものです。

以上は自動化の例です。他にもデータの更新のための入力を制限したり、Pythonではデータの分析や前処理というようなことも可能です。ある程度の機能を実装しようとするとそれなりに努力が必要ですが、逆に一度身に付ければ特にVBAは長く使える技術ですので、オススメです。

自動化ではRPAも一時期話題となりましたが、慣れるとVBAやPythonの方が思い通りに細かい作業が指定できますし、メンテナンスも自分で作った文やりやすいのでRPAに手をつけるならVBAかPythonのどちらかを先に学ぶ事を推奨します。またRPAはソフトのバージョンが頻繁に上がるため、バージョンの違いによる不具合などにも対応する必要があります。VBAは良くも悪くも20年前と今でほとんど同じ文法です。

プログラミングは地道な作業

Pythonにおけるデータ分析など世の中の注目を集めている技術は華やかに感じます。しかし、プログラミングというのは相当地味な作業です。華やかさとは縁遠いと言わざるを得ません。私感ですが、その作業工程はプラモデルや鉄道模型、ジオラマ、レゴブロックを作るのに似ていると思います。

まず全体としてどのようなモノを作るのかを考え、全体やユーザーが触れる部分をどのように作るかを考えます。この工程を外部設計と言います。これはプラモデルやジオラマでは構想で紙に絵を描いていく作業に当たります。次に細かい機能面を考え、どのように実装するのかを考えます。これを内部設計と言います。それぞれの部分を作成したらつなげてテストをしていきます。それぞれの部分を作成し、つなげるというのもプラモデルやレゴに近いモノがあります。この細かいところをそれぞれ作ったり、つなげて実装する部分がプログラミングに当たる部分です。

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作りたいモノを考え、自分の手を動かして作ると言うのが好きな人はプログラミングもきっと好きになるのではないでしょうか。念のための補足ですが、エンジニアがゲームや基幹システムを仕事で作る話ではありません。非エンジニアの事務職業務改善で行う手段としてのプログラミングについての解説です。

業務改善におけるプログラミングのまとめ

簡単ですがまとめます。

  • VBAやPythonなどのプログラミング言語を学ぶと自動化を始めとしていろいろな事ができるようになる
  • 自動化だけでなくデータの更新のための入力をさせたり、分析のための前処理を行う事もできる
  • プログラミング作業はツールを作る作業の一部
  • 外部設計、内部設計、プログラミングの順に進む
  • プログラミングは地味な作業
  • プラモデルやジオラマ、レゴを組み立てる様な作業なので手を動かしてモノを作るのが好きな人は好きかも知れない
  • この記事で解説しているプログラミングは、非エンジニアの事務職が業務改善の用途で使うもので、エンジニアのそれとは異なる

興味が持てればぜひチャレンジしてみましょう。文系/理系は全く関係ありません。始めて挑戦してみたい方は、下に挙げている関連記事も参考にしてみて下さい。

<関連記事>

*1:サブシステム

サプライチェーンマネジメント|SCM|業務改善関連用語事典

一般にSCMと呼ばれるサプライチェーンマネジメントという言葉を解説します。サプライチェーンの意味からサプライチェーンにおける業務改善の取り組み方についても解説していきます。

目次

サプライチェーンマネジメント(SCM)とは

サプライチェーンマネジメントとは何なのかについて解説します。各単語の頭文字を取って、SCMと呼びます。SCMという略語も一般的に使う言葉です。

SCM概要

SCMとはサプライチェーンをマネジメントすることです。サプライとは供給すると言う意味です。チェーンとはと言う意味です。マネジメントとは管理する、つまり、うまくいくように運用を行うと言う意味です。

サプライチェーンとは

サプライチェーンは供給の鎖と言う事で、モノが流れていく過程を鎖に見立てた言葉です。サプライチェーンがイメージできる様に模式図を掲載します。

サプライチェーンをイメージしやすく模式図にすると鎖のようになる
サプライチェーン模式図

一つの例として製造業のサプライチェーンの模式図を示しました。上の図のように材料をベンダーから仕入れ、工場で製品を生産し、一旦倉庫に移します。そこから受注に応じて客先に出荷していきます。これがサプライチェーンのイメージです。材料仕入れ先、工場、倉庫、客先のいずれも複数存在する場合が想定されますが、理解のための模式図のため、簡略化しています。

そして、材料仕入れ先、工場、倉庫、客先の様な模式図の中で○で示した拠点のことをノードと言います。そしてノードとノードをつなぐ線の部分をリンクと言います。リンクは輸送を意味します。そしてリンクの移動手段をモードと言います。例えば鉄道、トラック、航空便、船便、クーリエ便*1などが考えられます。

サプライチェーンをマネジメントするとは何をする事なのか

サプライチェーンが何か分かったので、それをマネジメントするとはどういうことか確認します。サプライチェーンを管理、運用すると言うことは各ノードやリンクを全体最適になるように構成し運用していくことです。材料の仕入れ先の拠点はどこに存在するのか、自社工場はどこに存在するのか、そして材料仕入れ先から工場まではどのようにして輸送を行うのか。1週間に一度輸送するのか、それとも、輸送頻度を1ヶ月に一度にして輸送費を削減するのか、他の材料仕入れ先と輸送タイミングを同期してまとめて極力輸送を抑えるのか、と言った様なことを総合的に判断してノードとリンクを設計していきます。

そして運用面では、例えば仕入れ先の納入遅延が起きた場合に、遅れを取り戻す手段として材料仕入れ先と工場の間の輸送リードタイムを短くするために出荷方法をより速い手段に変更することがあるかも知れません。その場合はどのような判断基準でどのような輸送方法に切り替えるのかと言った基準を設けたり、実際に輸送方法を切り替える運用手順を決めたり、運用を行って行きます。

ここでは材料仕入れ先と工場というノードとその間のリンクを例に説明しましたが、これをサプライチェーン全体に対して行って行きます。これがサプライチェーンをマネジメントすると言う事です。

SCMにおける業務改善活動

SCMはロジスティクスの効率を最大限高めるために必須の経営手段です。この領域で改善を図ることは非常に重要で、また考えられる改善の施策も多岐にわたります。ここでは一部を紹介します。ここで紹介しているモノだけでなく自由な発想で色々なシミュレーションをすることでコスト削減や効率化に寄与する施策が立案出来るようになりましょう。

マネジメントの視点からノード・リンク・モードの最適な組み合わせを探る

経営視点でSCMを改善するメインの施策がノードとリンク、モードの組み合わせの最適化を図ることです。物流部門の担当者だと輸送コストにばかり減らそうとしたり、倉庫に保存してある在庫の回転期間の短縮施策ばかり検討したり、自分の担当する部分の経営管理指標にのみ意識を集中しがちです。しかし、全体最適を達成するべく、輸送コスト倉庫の在庫の持ち方、倉庫拠点の運営経費などを総合的に勘案してベストな組み合わせを検討していく事が重要です。

例えば、倉庫拠点を増やすことによって、倉庫の運営費は増えますが、輸送コストが下がるので結果的にコストは下がる、と言った様なことです。

各ノードにおける改善施策を現場に落とし込む

各ノードはそれぞれの拠点なので、それぞれに改善の施策があります。経営視点という広い視野でSCMの最適化を図った後は、それぞれの現場での改善をボトムアップで仕上げていきます。例えば倉庫であれば、ピックアップの導線の改善や受け入れ検収の効率化と言った様な現場の改善施策です。

SCMまとめ

以上、SCMの解説とSCMにおける業務改善施策を説明してきました。内容をまとめると下記の通りです。

  • SCMはサプライチェーンマネジメントの略で、物流、ロジスティクスを一つの鎖のように見立てて管理を行う事
  • SCMはノードとリンク、モードを管理する事で達成できる
  • SCMはロジスティクスの効率を最大限高めるために必要な経営手段
  • SCMにおける業務改善を行うには、ノード、リンク、モードの最適な組み合わせを探る
  • 最適なノード、リンク、モードの組み合わせを達成したら、各ノードにおける業務改善施策をボトムアップで行う

*1:国際宅急便のこと

ビジネスチャットとは何か|導入するメリット10選+注意点3つ

働き方改革や新型肺炎ウィルスの影響で在宅勤務が急速に注目されています。今回はそのような背景で存在感を増しているビジネスチャットを導入するメリットについて説明します。
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目次

在宅勤務に強いだけではないビジネスチャット導入のメリット10選

在宅勤務に限らずビジネス茶とは生産性向上やリスク回避の視点でも大きな威力を発揮します。この記事はビジネスチャットとはなんなのかについて概要を説明してから、メリットについて解説していきます。

一方でビジネスチャットには、社内で普及するに当たり、注意点もあります。もしあなたが導入で悩んでいるのであれば最後まで読んで頂ければ参考になることがあると思います。

ビジネスチャットとは

そもそもビジネスチャットとは何かについて説明します。基本的にはチャットです。プライベートで利用しているチャットツールとしては日本ではLINEが有名ですね。

チャットツールを使ったことがない方のために簡単に概念を説明します。チャットとは相手と自分との間に立て札があり、そこにお互いメッセージを書き込むイメージです。自分の場所ではなく、共有している板にメッセージを書き込み、時間ができたらその立札を見に行く、というのがポイントです。

人と人の間に立ててある立て札にメッセージを書き込む
チャットは人と人の間に立ててある立て札にメッセージを書き込むイメージ


一方、30代以上の方におなじみのEメールを比較のために概念を説明すると、こちらはお互いの郵便箱に手紙を投げ入れるイメージです。共有するものではなく、自分の場所に投げ込まれる、相手の場所に投げ込むというところがポイントです。

相手の郵便箱にめがけてメールを飛ばすイメージ
メールのイメージは相手の郵便箱にめがけて飛ばす。

このようにEメールの場合は飛ばしたり飛んできたりして自分の郵便箱にたまっていくので、処理しないと自分の郵便箱がいっぱいになってしまいます。一方、チャットの場合は自分の場所ではなく、共有している場所にお互い書き込むイメージなので、たまっていくイメージではありません。流れていくイメージです。


ここまでビジネスチャットの概念をEメールとの比較で説明していました。これはテキストメッセージのやり取りを例にした概念の説明ですが、ビジネスチャットとはそのようなチャットツールにビジネスで必要な機能を付加したものです。この板を共有するという概念が理解できればビジネスチャットに付加されている様々な機能はその延長で理解することができます。

具体的には下記の様な機能があります。

  • テキストメッセージのやりとり(絵文字含む)
  • ビデオ通話
  • コミュニティなどのグループ
  • スペースなど会議室
  • ホワイトボードなど、手書き文字やテキストを自由に配置した画像のやりとり
  • ファイル共有機能

様々な機能がありますが、お互いの間に板があり、そこに書き込んでいくイメージを持つと、その板のところに色々な形で情報を載せることができるという意味で理解しやすくなるのではないでしょうか。

テキストメッセージのやりとり

ビジネスチャットの基本的な機能です。プライベートで使っているLINEと同じで、文字を送信します。絵文字を利用することも可能です。また、最近のビジネスチャットはプログラミングのコードを埋め込んで*1共有するような機能も付いているものもあります。プログラミングでちょっとわからないところを教えあったりするのにも重宝します。

ビデオ通話

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非常に有益な機能としてビデオ通話があります。カメラがついているPC同士であれば相手の顔を見ながら通話することができます。顔だけでなく、現在自分が見ているPC画面を共有したり、開いている特定のアプリの画面(例えばパワーポイントなど)を相手のPCの画面に表示させることができます。このビデオ通話の機能によって社内でも、打ち合わせ相手の部署まで行くことなく、同じ資料を見ながら打ち合わせをすることができます。

コミュニティなどのグループ

など、と言っているのはビジネスチャットの種類によって呼び方が異なるためです。グループと言ってもよいです。人の集まりを一塊にしたものです。コミュニティを形成することにより、コミュニティで一つの立て札を教諭数ることになります。

スペースなど会議室

コミュニティが同じグループに属する人を束ねるものであるのに対し、スペースは同じ作業や話題を教諭するための会議室のような存在です。グループのよりも短い、あるいは緩い結びつきで情報共有を行うのに適しています。

ホワイトボードなど、手書き文字やテキストを自由に配置した画像のやりとり

ホワイトボード機能とは手書き文字や図表を共有できる機能です。ビデオ通話の項で紹介したように、ビデオ通話機能を使えば会議をリモートで行うことも可能です。会議室で一堂に会する会議ではホワイトボードにみんなが書き込んでいったり、ポストイットを貼ってアイデアをグルーピングしていったりと言うような打ち合わせの方法が可能です。あるいは、議論の過程を残すためにホワイトボードに書き込んだ文字を写真に撮っておくこともあります。ビジネスチャットのホワイトボード機能はこのような事を可能にする機能です。

ファイル共有機能

ビジネスチャットはEメールよりもはるかに大きなファイルの共有が可能です。メールは添付できるファイルサイズに10MBなどの制限がありますが、ビジネスチャットは非常に大きなファイルの共有が可能なため、ファイル共有ソフトを立ち上げてパスワードだけ後でメールで送るといった手間が発生しません。

また、後述のようにビジネスチャットは誤送信の可能性が低く、閉じられた空間で利用するため、セキュリティ面でも安心です。

ビジネスチャットの説明は以上です。ここからビジネスチャットのメリットについて説明していきます。

危機管理的に役立つ

ビジネスチャットはメインのコミュニケーションツールとして導入を推進する価値がありますが、代替え手段としても力を発揮します。ビデオ通話やテキストのやり取りなどができるということは、電話やEメールの代替え手段になりうるということです。この点について掘り下げていきます。

1.在宅勤務に効果的

新型肺炎の流行や働き方改革の呼び声から在宅勤務を推進する企業が増えています。働くことができる場所が増えるということ自体がリスク回避の意味を持ちます。例えば、従来なら大雨で電車が止まる場合など、自宅待機が余儀なくされるとその間、仕事をすることができませんでした。

しかし、在宅勤務が可能となることによって、自宅で安全に業務を進めることができます。ビジネスチャットはそのアプリ一つを開いておけば、テキストメッセージのやり取りや電話替わりのビデオ通話も即座に可能であることから、在宅勤務においては非常に重宝します。まさにリスク回避、危機管理の観点からも導入しておく価値は高いと言えます。

2.メールの代替え手段として有効

インターネットが使える限り、メールが使えないということはあまりありませんが、大きなファイルを送信したい場合にビジネスチャットが代替え手段となります。

3.電話(会議システム)の代替え手段として有効

電話が使えなくなることや電話会議システムが故障して使えなくなることは、ままあります。遠隔地と電話会議を予定していて、突然電話会議システムが故障していることに気づく、と言った場合、従来では会議そのものを延期せざるを得ませんでした。しかし、ビジネスチャットを利用することによって、電話の代替ができます。

このように複数の連絡手段を確保しておくことがリスク回避につながります。

無駄が減り、効率が高まる

前項ではリスク回避のための代替え手段としてのビジネスチャットのメリットについて見てきました。ここからはビジネスチャットそのものの付加価値を見ていきます。

4.メール関連の作業に費やす時間が減る

ビジネスチャットにはメールを減らす効果があります。これには複数の側面があります

  • テキストメッセージのやり取りができるため、送信メールが減る
  • CCが存在しないので受信メールが減る
  • チェーンメールから別件に派生しないので題名と内容の食い違いが起きない
  • 誤解が起きにくいの確認メールが減る
  • 既読かどうかがわかるため、メールのリマインドや電話でのリマインドが不要となる

使えば使うほど、このあたりの内容が腑に落ちてきます。例えば、CCが存在しないので受信メールが減る、については、「一応知っておいてほしい人に入れたい時はどうするの?」という疑問が出るかもしれません。しかし、実際、必要ないんです。CCに入れたって、どうせその人はそのメールは見ません。しかし、Eメールがある限り、EメールにCC機能がある限り使ってしまうんですよね。

5.電話が減る

電話が減ります。既読かどうかがわかるので、送ったメールに対して「メールを送ったので見てほしい」というアホみたいな(でもメールを利用する人にとっては大事な)確認をしなくてよくなります。電話をやめることは作業効率向上にてきめんです。電話は相手の状況がわからないのに一方的に時間を奪うと言う、とても傲慢なコミュニケーション手段です。

あなたも作業をしていて電話がかかったので一度手を止めたら、電話が終わった後に「あれ、何やってたっけ」と思い出すのに時間を使ったことはありませんか?集中力が途切れてまた同じ集中状態に戻るのに時間がかかる、と言う時点ですでに大幅に作業効率がダウンしているのに、さらに何をしていたのかを思い出すのにも時間を使ってしまっています。

これほど電話による作業中断の効率低下は著しいのです。電話が減るということは相手と自分の作業効率を下げないことに直結します。電話を減らすことができるということは、これだけでも大変価値のあることです。

ビジネスチャットだと、手が空いた時にテキストメッセージを見ることができるというメリットがあるので、必要以上に手を止める必要がありません。この点だけ見るとEメールでも同様のメリットがあるように思うかもしれません。ある程度まではそうなのですが、Eメールには先述のようにCCという不要な機能があるために、非常に受信数が多いというデメリットがあります。その結果、必要なメールが埋もれ、探すのに時間がかかってしまうことが頻発します。

ビジネスチャットは電話とEメールそれぞれ固有のデメリットを受けずに、見たい時に見て、しかも埋もれないといういいところ取りを可能にします。とても良い方法です。

6.会議が短縮し中身が濃くなる

ビジネスチャットはファイルの共有が可能です。よって会議資料を事前に配布しておくことができます。これより、前提知識の共有、つまり説明に費やす時間が減らせます。よって会議は情報共有の場から意思決定の場に変化します。

7.会議資料事前準備のための会議が減る

会議に備えて会議資料を準備する過程で、事前に会議資料の読み合わせのようなことをする場合があります。会議資料を事前に共有することができるということは、このような読み合わせの時間を短縮することにつながります。そしてビジネスチャットではそのスペースでどんどん修正を加えて保存していけばいいので、会議出席メンバーが一堂に会する必要なく資料の更新を進めることができます。

そして、会議資料の事前準備のための会議と言った位置づけの会議が減っていきます。会議が減らせるということは、個々人が使える時間が増えることにつながるため、生産性の向上に寄与します。

8.確認する時間と探す時間が減る

すでに一部触れましたが、ビジネスチャットはメッセージが埋もれることがありません。なぜならメールと違って一つの箱に色々な人のメッセージを詰め込んでいくわけではないからです。あくまで人と人の間にメッセージを書き込む立て札があるイメージなので、誰とのやり取りだったかがわかっていれば、検索機能を使って調べることができます。

同じ人とのやり取りはずっと同じ立て札に書いていくので、別件も含めその人とのやり取りの流れがすべて一つの記録として残っていることも検索を簡単にしています。

9.ビジネスのスピードが飛躍的に上がり始める

これまでのふくごうこうかでビジネスのスピードが飛躍的に上がり始めます。最初はメールの代わりにビジネスチャットを使う、電話の代わりにビジネスチャットを使う、と言うように置き換えるように利用していきます。そのうちに、ビジネスチャットを使って情報発信と受信を行うことが当たり前になってきます。この領域になるとこれまでのメリットが相乗効果を生み、ビジネスチャットを利用することによるメリットが1+1=2以上の効果を生み出すようになってきます。

10.自分に関係ないメッセージを気にしなくて良い

メールはCCが余計な機能であることはすでに説明しました。ビジネスチャットのやり取りはメッセージを送るのではなく、人の間にある立て札にメッセージを書き込み、それをお互いに見に行くイメージの為、そもそも無関係なメッセージが入ってくることがありません。あなたあてに書き込まれたメッセージのみを見ることができます。

ビジネスチャットにおいてあなたに新着メッセージの通知があるということは、CCではなく「あなた宛て」のメッセージあるということです。そのうち、未読のメッセージが残っていること自体が気持ち悪くなってきます。

仕事の付加価値が高まり、生産性が高まる

10.スペースの活用でコミュニティが盛り上がり、新しいアイデアが創出されやすくなる

コミュニティやスペースを有効活用することで活発な議論を行うことができます。メールはメッセージのやり取りであり、一人の情報の発信者とその他の受信者という立場に分かれます。しかし、ビジネスチャットの場合は人と人の間に置かれた立て札の概念であるため、立場がフラットです。そのためAさんとBさんのやり取りにCさんが意見を付加する、と言うことが簡単にできます。これをメールで行おうとすると横槍を入れる様な形になってしまいます。アイデアに意見をどんどん付け加えていける、修正していける、と言うことで短時間で議論が進展していきます。

このようにスペースやコミュニティが盛り上がれば盛り上がるほど新たなアイデアは生まれてからブラッシュアップされるまでの時間が短くなっていきます。結果としてより短い時間で、より完成度高いアウトプットを生み出すこととなります。これはまさに仕事の付加価値が高まり、生産性が高まることそのものを意味しています。

その他のメリット

これまで無駄の削減と付加価値の向上と言う面からビジネスチャットのメリットを紹介してきました。メリットの締めくくりとしてセキュリティ面についてのメリットを紹介します。

セキュリティ面でメールより有利

ビジネスチャット2つの点でセキュリティの点でメールよりも優れています。以下の2点です。

  • 誤送信しにくい
  • セキュリティ確保された領域を使う

既に触れている通り、共有している立て札を見に行き、そこに書き込むというスタイルの為、ご送信の概念がそもそもありません。「うっかり全員返信」も基本的にありません。

また、ビジネスチャットは社内と言う閉じられた空間で使うために、セキュリティ面で安全です。外部からメッセージの内容を読み取られる心配もありません。メールの場合は誤送信をしなくても、メールの内容を読み取られる可能性がありますが、社内ネットワークを利用するビジネスチャットの場合は、閉じられた空間である分、セキュリティ面で強固であるというメリットがあります。

ビジネスチャットの注意点3つ

スペースやグループの乱立に警戒する必要がある

これまで主にメールと対比する形でビジネスチャットのメリットを解説してきましたが、ここで注意点があります。それは会議室の概念であるスペースやグループの概念であるコミュニティを乱立させないことです。似たような立て札が増えると、だんだんと関係ないメッセージが生まれてきてしまいます。少人数のコミュニティで活発に議論していたはずが、関連メンバーと言うだけでどんど人を増やすと、自分が直接関係ないメッセージが増えてきてしまうのです。

関係者しかいない、すべてのメッセージは自分宛と言う古瀬ぷ都が崩れ、すべてのメッセージが全員CC状態になってしまうのを防がないと、ビジネスチャットのメリットが大きくそがれてしまうことになります。

また似たようなスペースが複数できることにより、同じ話題が複数のスペースに分散してしまうという、非常に効率の悪いことが起きる可能性が出てきます。くれぐれもスペースの乱立には気を付けましょう。

アーカイブできないので昔の話題は探すのが難しい場合がある

ビジネスチャットはずっと同じ立て札に書き続けていくため、メールのように既読メールを既読フォルダに移すという概念がありません。そのため、大昔の内容になると検索が難しくなってしまう場合があります。これは要注意で、決定事項だけでは議事録としてアーカイブ用にメールで配信するといった、使い分けで対応をする必要があります。

普及を促すのと運用ルールの普及を同時に進めなくてはならない

上記のようなスペースの乱立を防いだり、決定事項だけでは議事録をメールで配信するといった、職場職場でのルール作りが必要になってきます。ルールを作ると普及しにくくなる一方、普及が進んでからルールを浸透させるのは難しいというジレンマがあり、ルールを浸透させながら普及させていく必要があるという注意点があります。

これは職場の自主性に任せていては難しいため、普及役を定めるのがおすすめです。職場ごとに伝道者をたて、その人に普及の旗振り役を務めてもらうのです。このような普及者の事をエバンジェリストと言ったりします。

ビジネスチャットとは何か、メリット注意点まとめ

以上の内容を非常にざっくりとまとめると下記の通りです。

  • ビジネスチャットは人と人の間に立て札を立てて、情報を共有する
  • リスク回避、無駄の削減、付加価値の向上により生産性向上を見込むことができる
  • セキュリティ面でのメリットもある
  • 普及とルールが必要
  • 普及には普及の旗振り役が必要

低い投資コストでできる生産性向上ツールです。まずはビジネスチャットの導入と社内電話の廃止から始めてみませんか?

*1:マークダウンと言います。チャットツールによって異なりますが、ある記号で囲った区間にプログラムなど一塊の文字列を書いて共有することができます。

業務改善で手をつけるポイント25選

業務改善を行うときに手をつけるべきポイントを50個紹介します。

業務改善には既存プロセスの改善と、全く新たな業務プロセスを構築し導入、定着を図る場合があります。今回は比較的現場に受け入れられやすい、既存業務プロセスの改善を行うポイントをPQCDSMEのカテゴリにわけて紹介します。
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目次

業務改善で手をつけるべきポイント

業務改善とは業務の進め方を変えることでアウトプットやアウトプットまでにかかる過程を改善することを意味します。製造業や生産現場のカイゼンを語る時によくQCDと言う言葉が出てきます。ここではQCDをさらに拡張したPQCDSMEに改善施策を分類して業務改善で手をつけるべきポイントを紹介します。PQCDSMEの考え方は製造現場だけでなくオフィスワーク、物流現場、営業現場などあらゆる現場に適用できる考え方です。

PQCDSMEについて

PQCDSMEにカテゴリー分けして改善ポイントを紹介するので、前提のPQCDSMEの内容を簡潔に説明します。

  • P:Productivity

生産性のこと。製造業で生産性と言えば普通は時間当たりにどれくらいのモノが製造できるか、と言う意味です。1時間当たり100台生産できるところ、110台が生産できるようになったとすれば、10%の生産性向上と言う事になります。これは狭義の生産性です。広義には生産性とは付加価値のことです。付加価値とは大まかに言うと粗利益のことです。100台生産できていたものが110台生産できるようになると言う事は、粗利益額も10台分増えるので、その意味でも生産性向上になります。一方、広義の生産性で言った場合、粗利益のことなので、原価低減も生産性向上につながります。しかし、原価低減はCのコストで取り扱うので、ここでは売上高の向上につながる事を生産性と捉える事にします。

  • Q:Quality

品質のこと。品質には大きく分けて狙いの品質できばえの品質があります。狙いの品質は「こういうモノを作ろう」という設計品質のことです。例えば、2時間3000円の焼き肉食べ放題で高級和牛の希少部位を無制限に提供するのは商売が成り立たないとします。その場合、商品の質は過剰に良すぎることになります。この場合「2時間3000円の焼き肉食べ放題で高級和牛の希少部位を無制限に提供する」というのは狙いの品質が高すぎることになります。つまり狙いの品質は経営判断です。一方のできばえの品質は、狙いの品質にどれだけ近いか、と言う事です。

  • C:Cost

コストのことです。コストとは提供すべきモノやサービスを産み出すのに消費する経営資源のことです。経営資源とはヒト・モノ・カネのことですが、人件費はこのコストに含みません。含むべきは人件費ではなく、時間です。

  • D:Delivery

納品のことです。納品には納期だけで無く、どのように届けるかという提供方法を含みます。

  • S:Safety

安全のことです。従業員を労働災害からまもるという物理的な安全のことだけではなく、安心して心地よく働けるといった精神面での安全性も含みます。怪我や心理的な負担がない状態は衛生状態が良いと言います。衛生は失われて始めて大切さに気づき、保たれているときはその重要性が分からないため、維持、向上させるためにはそのための仕組み作りが必要となります。

  • M:Moral

士気のことです。Sで出てきた精心的な安全性が確保された上で、やりがいや自己成長につながる仕事ができているかどうかという事が課題とななります。

  • E:Environment

環境のことです。二酸化炭素排出による地球温暖化など地球規模のものから、騒音や大気汚染など近隣への環境への影響までを全て含めて企業の責任として捉える必要があります。

P:生産性に関する改善

広義の生産性改善ポイントを紹介します。生産性向上の施策は売上につながる作業を行うか、無駄な事を辞めることの2つの方向があります。

1. 会議資料作成を自動化する

PCを使ったオフィスワークの自動化の一つです。時間を削減します。VBAでグラフの更新からパワーポイントの作成までを自動化します。資料作成は「仕事をやってる感」が強いので満足しがちです。しかし、資料作成自体から産み出される付加価値はゼロです。有益な分析にヒトの時間を使えるよう、会議資料更新や作成は自動化しましょう。

2. ビジネスチャットを導入して報告・情報共有の会議をやめる

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会議をビジネスチャットでやれ、と言うわけではありません。ビジネスチャットを導入すると会議を減らすことができる、と言うお話です。課内会議から本部会議など様々な会議があります。その中で、最も先に避けるべきは業績や来月の予定など報告や情報共有が目的の会議です。情報共有はSlackやWebex Teamsといったビジネスチャットツールで共有すれば済むはずです。チャットは既読が付くので誰が資料に目を通したかが把握できます。

また、意思決定を行う会議の場合でもビジネスチャットで資料を予め共有しておけば、本題である意見交換、意思決定の部分にのみ時間を使う事ができ、会議がより充実したり、会議を短時間で終わらせる事ができるようになります。

またビジネスチャットを導入することにより、意見交換までチャットで行うところまで行けば、意思決定の会議ですら削減につながります。

そもそも、会議は多くの人の時間を同時に消費する、というコスト感覚を持つことが大事です。
<関連記事>

3. 朝礼をやめる

朝礼で意思決定や意見交換がされることはありません。完全なる情報共有です。前項で説明した会議と同様の理由で、ビジネスチャットを導入することにより朝礼を辞めることができます。さらに、時差勤務や短時間勤務制度を利用している人は朝礼に出ることができません。それではその人達は朝礼に参加できなかったことにより業務に支障をきたしているでしょうか。答えはNoです。実は朝礼は何の意味もありません。この時間を奪うという意味だけでも、即辞めるべきですが、朝礼中はずっと立っているため、疲れてしまいます。朝一番、いきなり疲れさせておいてそこから一日が始まる訳です。

工場や倉庫など、オフィスではない現場では点呼を取る必要があるかも知れません。しかし、それはホワイトボードにマグネットを置くといった工夫で対応できます。作業用の通達事項がある場合は、掲示板を使うことができます。このようにオフィスワーク以外の現場でも朝礼が辞められないか、短くできないかと言う検討を行う余地は十分にあると言えます。

4, 電話を辞める

ビジネスチャットを導入すると会議だけでなく、メールと電話も減ります。特に電話は相手のせっかくの集中を切れさせ、無遠慮に時間を奪います。電話がならない職場を目指すアプローチは大いに有効です。ただし、ビジネスチャットを導入するだけでは電話を辞めることはできません。もし、現在、社員一人一人に電話機が割り当てられているのであれば、部門内の電話機を一つだけのこして、個人の電話を全て回収しましょう。TeamsやSlackを導入すると同時に、2週間後に電話を回収する旨を周知します。ビジネスチャットを使ったことがある、というレベルから電話代わり、メール代わりになるまで持って行きます。そして、約束の2週間後に約束通り一気に電話を回収してしまいます。

5. プリントアウトとコピーを辞める

資料のプリントアウトとコピーは無駄なので辞めます。これは時間と紙代、インク/トナー代の削減につながります。紙代、インク/トナー代の削減だけを見るとコストに分類する方が良さそうですが、時間効果のホウが大きいので生産性に分類しました。

なぜ時間削減につながるかというと、3つの手間が掛かるからです。まずプリントアウトする事そのものの手間です。次にいつかはその紙が要らなくなるときが来るため、捨てる手間が生じます。また、捨てないと机の上や引き出しの中が紙だらけになっていきます。すると、必要な書類がなかなか出てこないため、探すという究極にムダな時間と手間が生じることになります。

Q:品質に関する改善

品質に関する業務改善は下記の二つの方向があります。

  • 狙いの品質の「狙い」を見直す
  • できばえの品質を達成しやすい環境を構築する

なお、品質というと提供するモノやサービスに関する品質のことをイメージしがちですが、オフィスワークや工場、倉庫と言ったあらゆる現場での作業に適用される概念です。ここでは作業品質としてとらえて品質に関する改善策を見ていきます。

6. 商品の価値と価格を確認する仕組みを構築する

狙いの品質は価格設定と表裏一体です。価格に見合った価値を提供します。そのため、狙うべき価値は過剰でも不足でもダメです。ファストフードのハンバーガーに高級和牛を使っていては商売になりません。しかし、健康志向や高級志向が高まり、需要、ひいては市場規模がビジネス可能な規模まで成長するようであれば、そこに参入すべきという経営判断もあり得ます。

その時は高い狙いの品質に見合う価格をつけることとなります。ブランドも別のものを立ち上げる必要がある場合も想定されます。そのように時代の流れやニーズをくみ取る為の仕組みを構築しておくことが有効です。この辺りは経営者など一部の人の感覚や経験、情報処理能力といった個人の能力に頼っている場合が多いと思います。

しかし、仕組みとして構築しておくことでビジネスチャンスを逃さず者にしていくことができます。例えば、ニュースの内容を自動で取得してデータベースに格納したりTwitterである単語を含むツイートを自動で取得してデータベース化し、分析することなどが考えられます。

7. PC作業を自動化する

1では会議資料作成の自動化について触れました。会議資料に限らず、データの集計や売上伝票の処理といったオフィスワークは多くの場合自動化することができます。自動化することにより、コンピューターが機械的に作業することになるので、人間が手作業で作業を行ってミスをする、というようなことを防ぐことができます。また、自動化はミスを防ぐだけでなく誰がプログラムを実行しても同じ結果となります。つまり、条件が同じであれば、毎回同じ結果が出力されます。このことはまさにできばえの品質が安定することにつながります。

8. 倉庫ピッキング作業を自動化する

オフィスワーク以外でも自動化による品質安定のメリットがある事に変わりはありません。ある程度の投資が必要となりますが、倉庫現場ではピッキング作業を自動化することができます。ピッキングとは作業員が倉庫の棚からモノを取り出す作業のことです。その差異伸張に品番を確認したりバーコードで読み取ると言ったポカよけの工夫がされていますが、どうしても隣の商品をピックしたり数量を間違ってしまったりと言うことが置きます。これを自動搬送機と自動倉庫を利用することで、ピッキング作業を自動化することができます。ピッキング伝票をスキャンすれば、必要なモノを必要な数量だけ機会がピックして持ってきてくれるため、人間が仲介するところがなく、ミスが起きる場所がありません。

9. 生産を自動化する

工場の生産を自動化します。人間の作業は生産ではなく生産する機械の管理に変わります。生産を自動化するには生産に関わる機械を導入するだけでなく、材料を輸送する搬送機の導入なども必要となります。しかし、これらを一度に導入する必要はありません。まずは自動搬送機で材料を運ぶところのみを自動化する、など部分的に自動化を導入し、徐々に拡張していくこともできます。

なお、人間が作業していた時の導線をそのまま搬送機に移動させるのではなく、新たに自動搬送機が移動できるのに適したレイアウトを設計する必要があります。

10. 作業手順を現場に作り直させる

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オフィスワークであれば業務手順書、工場や倉庫であれば作業標準書と言った様な作業の進め方のマニュアルが存在します。しかし、私の経験からいって、全ての作業がマニュアル通りに実行されている職場はひとつとしてありません。守られなければならない手順もしばしば無視されています。

しかし、それは現場が悪意を持ってマニュアルを無視しているわけではなく、ムダのある作業だったり、ちょっとしたコツというようなモノがあってそれを採用している為にマニュアルとは異なる作業になっています。そしてそれを責任者は知らないか知らないフリをしているかのどちらかになっているという状態です。

自動化などの改善施策は実は現場がマニュアル通りに作業を行っているからこそ、その作業を自動化に落とし込んでいくことができます。実際は違う手順なので自動化することができなくなってしまいます。それであれば、実際の本当の作業をぶっちゃけてその作業をマニュアルにしてしまえばいいのです。あるいは自動化することを前提にマニュアルを作り直すことも考えられます。「自動化するために、こういう手順に変える」ということです。

このようにマニュアル通り作業するのではなく、実際の作業をマニュアルにすると言うような作業は現場でしかできません。ぶっちゃけベースで現場に作業をマニュアル化してもらい生きたマニュアルにする事で、作業品質が安定し、ひいては自動化などの改善施策につながっていきます。

C:コストに関する改善

コストに関する改善施策を紹介します。コストに人件費は含みません。

11. 緊急輸送を減らす

クーリエ便などの緊急出荷をすると輸送費が高く付きます。緊急となる前に予め必要な場所に必要なモノを必要な数量だけ届けておくことにより、輸送費を削減することができます。とはいえ、このことはサプライチェーンマネジメントの永久の課題とも言える難題で様々なポイントをクリアしないと実現しません。

12. 調達先を再検討する

材料費を下げる施策として調達先を再検討することが挙げられます。調達先をひとつに絞り、発注量を増やすことでボリュームディスカウントを得る交渉をする方法と、複数購買先を設定し、互いに単価を競わせる方法があります。調達先を一つに絞ることはトラブルがあったときに調達ができなくなると言うリスクを追うことにつながるため、基本的には調達先を増やして競争させる事によって単価を下げる方法がおすすめです。

また、ボリュームディスカウントについては得られればラッキーくらいで考えるようにします。ボリュームディスカウントのために調達量を増やすというのは、設計変更で使えなくなり廃棄せざるを得なくなるなど、在庫リスクを抱えることにつながるため、オススメしません。

13. 広告宣伝費の使い途を再検討する

テレビCMや町中の看板、電車内のアナウンス、新聞などのブロードキャスト型の広告は費用対効果を測定する事が不可能です。多額の宣伝費用が役に立ったのかどうか検証することが困難なので、広告の打ち方を再検討する余地があります。現在はスマホの普及で誰でもいつでもインターネットに接続している状態と言えます。

そのため、ネット上の広告を選択肢に入れることが有効です。上述の広告と異なり、ユーザーの目に触れた回数やクリックされた回数が分かるため、役に立った分だけ広告費を支払う事ができます。広告の出す側のサブスクリプションとも言えます。広告費にムダがなく、また、どの広告が売上に寄与したかも分かるため、広告宣伝費の使い道を検討する余地は大きいと言えます。

D:納品に関する改善

Dは「納期」と解説されることが一般的です。約束の期日に間に合うかどうか、と言う視点です。しかし、納期だけでは視野が狭いため、この記事ではDを納品という概念で捉えます。納期はもちろんのことどのようにして届けるかと言う事まで考えます。

14. 輸送タイミングを検討する

Cのところで輸送費の説明をしましたが、近くの拠点まで予め輸送しておくことにより、緊急輸送の頻度や量を減らすことができます。また近くの拠点まで輸送をしておくことにより、必要になってから納入されるまでのリードタイムが短縮できるメリットもあります。近くの拠点まで輸送しておくと言うことは、一時的に在庫をストックしておく拠点が必要となりますので、それに必要なコストとのバランスで検討します。

15. 需要予測の精度を高める

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いつ、どの程度の需要があるかを精度よく予測できれば緊急輸送の発生を抑えることができます。需要予測に単なる過去の実績の平均値を使っている職場を見かけてきましたが、季節性の変動やイベントによる需要変動を盛り込むことによって需要予測の精度を高めることができます。

近年ではディープラーニングの手法を用いて需要予測を行う場合もありますが、ディープラーニングを行うためには豊富な過去のデータが必要なので、適用できる職場はあまり存在しません。ARIMAモデルや一時平滑指数法といった有名なモデルを季節指数で補正するなどの工夫をして、予測精度を高めていきましょう。

16. 安全在庫の概念を導入する

いくら需要予測の精度を高めても、予測が実際の需要数とぴったり一致し続けることはありません。需要予測は当てものではありません。そこで、誤差があることを前提に、どの程度の欠品を許容するかを決め、その欠品率を達成するための在庫を需要予測分とは別に余分に持つことにします。これを安全在庫と言います。

この安全在庫の考え方はノリ、経験、感で発注担当者が決めている場合があります。あるいは一見まともに見える「X日分の在庫を持つことにしている」という考え方もX日の根拠がありません。結局、ノリ、経験、感です。この安全在庫の設定に統計学的な考え方を導入することで、安全在庫を必要かつ十分で最低限の量に設定することができます。

在庫水準を低く抑えることは、設計変更に伴う古い在庫の廃棄リスク低減やきゃしゅフロー改善の効果を持ちます。

17. 輸送方針を見直す

以下のような輸送方針を見直すことでより付加価値の高い輸送を実現できる可能性があります。

  • まとめて運ぶのか、仕上がったモノから順に運ぶのか
  • 自社の物流網を使うのか、輸送業者に委託するのか
  • 物流御者とは年間の法人契約を結ぶのか、スポットでの依頼にするのか

納品に関しては輸送コストの観点も大事ですが、どのように輸送するのが提供する商品の価値を最大化するのかと言う観点を持つようにします。

18. 倉庫拠点戦略を見直す

倉庫拠点を持つということは、自社倉庫を持つ場合でもサードパーティ倉庫を持つ場合でも倉庫運用コストがかかります。しかし、複数の倉庫拠点を持つことにより、近場まであらかじめ運ぶことができるため、緊急輸送を減らしたり、長距離の輸送を減らすことによるコスト削減効果が得られる場合があります。倉庫拠点数と輸送費用はトレードオフの関係があるため、どこに倉庫を配置するか、全部で何拠点配置するかはいろいろとシミュレーションを行うと、現在よりトータルのコストが抑えられる可能性が高いです。理由は、はじめて倉庫拠点を設置したときと現在では輸送の内容や輸送手段、輸送先の内訳などが変わっているためです。

S:安全に関する改善

従業員の安全は会社の責務です。労働災害の発生は世間の目も厳しく、また大切な従業員が働けなくなることは会社にとっても大きな損害となります。工場や倉庫では過去の経験から様々な労働災害の防止策が図られていますが、オフィスではおろそかになっている場合があります。

19. ルール作りを行う

たとえば下記のようなルールが考えられます。

  • 個人でカッターを所持することは禁止する。カッターを使うときは軍手をはめる。
  • 雨の日は階段ではなくエレベータを利用する
  • 階段昇降時は手すりを持つ

このようなことをルールとして決めるなどと言うのはあほらしいと思うかもしれません。しかし、怪我をすると、健康であることのありがたみがわかります。そして怪我をしてからをしてからでは手遅れです。

20. そもそも怪我しないようにしておく

かがんでいる状態の人がいる時に、別の人が上のキャビネットを開け、かがんでいる人が立った時にキャビネットの扉の角に頭をぶつけて何針か縫うという労働災害を聞いたことがあります。「そんなことするなよ」と言いたくなりますし、実際その通りです。しかし人間はアホで気が利かないものだという前提のもと、とがってるところには緩衝材をつけておく、と言うような予防策を打っておくことが必要です。曲がり角にはミラーを設置する、階段には手すりを設置するなど、考えられる事はいくらでもあります。

M:士気に関する改善

士気とはやる気の事です。自然にやる気、やりがいが湧き出てくるような職場にしていくことが非常に大切です。

21. ノルマを作らない

ノルマは従業員のやる気を削ぎます。プレッシャーになることはあってもモチベーションにつながることはありません。またプレッシャーが営業成績などにつながることもありません。

22. 目標設定にこだわる

目標設定は重要です。高すぎる目標を立てるとやる気がそがれます。低すぎる目標は意味がありません。意味が感じられる、チャレンジングな高めの目標を設定するようにします。「目標を聞かれたら現在の売上より2桁多い数字を言うようにする」というような話もありますが、それは自分自身に課す目標の話であって、部門や他人が達成するための目標を高すぎるものにしてはいけません。

23. 自分の成長を感じられる工夫をする

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人間には自己実現の欲求と言うのがあり、自分の成長が感じられたり目指す姿に慣れた時に非常に大きな喜びを感じます。人間は本来成長したり勉強したりすることが好きな動物です。つまり、「自分の仕事は誰にでもできる仕事だ」「この仕事をしても何のスキルも身につかない」と思うようではその仕事を好きになることはできません。そして好きではない仕事で成果を残すことはできません。

自分の成長を感じられるようにするには、現在の実力でできることよりやや難しいことをさせたり、まだ経験したことがない仕事を経験させたりする必要があります。そしてその機会と場を作ることと、達成できるようにフォローする事が上司の重要な仕事となります。会社の経費で研修やセミナーに参加させたりすることもモチベーションを上げることには有効です。

そして何より、部下に、期待しているということを伝え、やる気を出させつつ責任感を持たせるようにすることが大切です。

24. 人間関係の風通しを良くする

結局最終的には人間関係です。どんなに仕事ができても自分の成長を感じられても上司や周囲との人間関係が良好でなければその職場で仕事を続けることは困難ですし、無理して続ける必要もありません。なるべく多くの人と話すように心がけるといった地道な努力が必要です。

E:環境に関する改善

環境とは様々な意味がありますが、ここでは職場環境ではなく、社会的な環境ととらえます。たとえば工場が排出する二酸化炭素や汚水などを削減するといった対応が必要と言うことです。

25. 改善提案を評価する

実は汚水の削減や二酸化炭素低減を進めることは環境にやさしいだけではなくコスト削減につながります。社会からの評価と言う非常に大きな無形の効果もあるのですが、ここで言いたいのは実際の経費のコストの事です。たとえば汚水削減は浄化コスト削減になります。

そもそも汚水が多いということは無駄な処理が発生しているということです。効率よく水を使ったり、自浄装置やフィルタで汚水になるのを遅らせたり、そもそもの水の使用量を減らすことができれば水道代が浮きます。

汚水削減のような改善は最先端技術などではなく、従来の日本型のカイゼン活動で削減することができます。貯水槽の洗浄タイミングや水の輸送ルート、フィルタの設置場所の変更といった地道な努力で環境の負荷をへらしていきます。そしてこのような改善提案を評価することでモチベーションにつなげていきます。

業務改善で手をつけるべきポイントまとめ

この記事では様々な改善ポイントを紹介してきました。職場によって改善活動ができるポイントは異なりますが、いくらでも改善ポイントはあります。この記事で紹介されたことだけではなく、この記事の改善例に着想を得て、新たな改善を提案したり取り組んだりしていきましょう。

予測誤差に基づく安全在庫の算出方法

需要予測と需要実績の差に着目した安全在庫の算出方法を解説します。この記事は在庫管理・発注業務を担当している方で、標準偏差と安全係数を用いた従来の安全在庫設定が大きすぎると感じている方を読者に想定しています。

目次

予測誤差に基づく安全在庫の算出方法

この記事ではまず、予測誤差とは何を指すのかを明確にした上で、安全在庫の概念について認識を揃えます。その後、安全在庫の具体的な計算方法と、実務で使えるエクセルの設計までを解説します。なお、従来の安全在庫の考え方を理解したい方は、まず、 安全在庫|一般的な考え方と予測誤差に基づく考え方の違いをご参照頂ければと思います。

この記事では、従来の安全在庫は本質をとらえておらず、予測誤差に基づく安全在庫を採用すべき、と言う立場を取ります。

予測誤差の概念

まず、予測誤差とは何を指すのかを明確にします。予測誤差とは需要予測と実際の需要実績の差を意味します。需要実績は在庫がある場合は出庫数(払い出し数量)と一致します。しかし、欠品になった場合は在庫がなくなっているので出庫数を超える数の需要があったことになります。受注伝票が保管できる環境の場合は受注数を需要実績とします。

店舗販売において欠品になり、正確な需要実績の数量が把握できない場合は、欠品になった時刻からその日の需要実績を推測する次善策を取りましょう。そうしないと、供給数量を需要実績とした場合、欠品があると需要が実際の需要より小さく算出されてしまい、誤った結論を導いてしまうためです。

こうして求めた需要実績と予め立てておいた需要予測を比較することで予測誤差を求めることができます。実際にエクセルを使って求めると下のようになります。

需要予測数・需要実績数・予測誤差の集計を行うとこのようになる
需要予測数・需要実績数・予測誤差の集計サンプル

このサンプルでは1行目に日付、2行目に需要予測数、3行目に需要実績数を記載しています。4行目には需要実績数 - 需要予測数で求めた予測誤差を入力する計算式が入っています。つまり、需要予測を超える実績があった倍は予測誤差が正の数となっています。

安全在庫の概念

安全在庫の概念は安全在庫|一般的な考え方と予測誤差に基づく考え方の違いで詳しく解説しています。簡単に考え方を述べると、需要予測と需要実績のギャップを吸収するためにあるのが安全在庫です。

より厳密に言うと、在庫がなくなり欠品を起こす可能性を、許容範囲に抑えるために、需要をまかなう分に追加して保有するのが安全在庫です。よってどの程度の欠品を許容するかによって必要な安全在庫は異なります。食品など保有できる在庫期間が短い商品は売れ残りによる廃棄リスクと欠品リスクを天秤に掛けた安全在庫設定が必要となります。

これが安全在庫の概念です。

予測誤差に基づく安全在庫の概念

いよいよ予測誤差に基づく安全在庫の考え方について解説します。従来の安全在庫は需要の変動に応じて安全在庫を求めようとします。需要の変動が大きいほど欠品リスクが高いと考え、需要変動が大きいほど安全在庫を持とうとします。

しかし、エアコンやビールのように季節性のある商品の需要を一年を通して見てみると、需要の変動幅は季節によって大きく変動があるものの、毎年同じような需要変動をします。

このような商品の需要予測の精度が高くなります。その結果、需要変動は大きいが需要予測精度が高い為、安全在庫は少なくて済む、という事がおきます。

そこで、需要予測の誤差が大きい程多くの安全在庫が必要と考え、需要予測の変動幅ではなく、需要予測の誤差を元に安全在庫を計算しようとするのが予測誤差に基づく安全在庫の考え方です。

どうやって需要予測の精度を評価するのか

それでは需要予測の精度はどのように評価すればよいのかについて考えていきます。

需要予測の精度を評価するには予測誤差のバラつきという概念を使う

項目名の通り、予測の精度を評価するには誤差のバラつきという考え方を使います。

これは、需要予測が妥当である場合、需要実績は需要予測を中心に正規分布すると言う仮定に基づきます。

時をかける少女のように、同じ場面を何度も繰り返して需要実績を何度も測定すると、需要予測と数値がぴったりなケースを最頻値としては需要予測と数値が離れるほど、そのズレ具合の出現頻度は下がると考えられるのです。

この釣り鐘形のバラつき具合が大きい程、予測誤差が大きいと評価します。

需要予測が妥当な場合、誤差が0を中心とする正規分布となる
需要予測と需要実績の誤差の分布

予測誤差のバラつきを計算する

それでは実際に予測誤差のバラつきを計算していきます。需要予測の精度を評価するには需要予測が実績と比較してどのようにばバラついているかを計算します。需要予測に対して需要実績が多い場合もあれば少ない場合もあります。バラツキを知るためには、標準偏差という値を求めます。

まず予測誤差の平均を求めます。4行目が予測誤差でした。14日分の予測誤差の平均を求めます。それを表の五行目に記入しました。

次にそれぞれの日付の予測誤差と予測誤差の平均の差を求めます。これで、予測誤差の平均からどれくらい離れているかが分かります。

次にばらつき具合を合算した求めたのですが、需要予測が多めに外れたのと少なめに外れたのが相殺すると正しくばらつきが計算できないため、ばらつきの値を2乗する事によって符号をプラスに揃えます。

その二乗した値を全て足したものの平均を求めます。このあたいを分散と言います。先ほど2乗してから足し算をしたために単位(次元)が個の2乗という訳の分からない単位になっているので、平方根を求めます。これが標準偏差です。

ここまでの計算の結果を表にしたものは下記の通りです。

誤差のバラつきを計算することで需要予測の精度を表現することができる
需要予測の精度を求めるために誤差のばらつきを表す標準偏差を求めた

計算方法は長くなってしまいましたが、毎回同じ計算方法なのでエクセルで計算式を入れておけば、需要予測を予め入力しておけば、需要実績を更新するだけで自動的に標準偏差を求めることができます。

求めた予測誤差に基づく標準偏差をもとに安全在庫数を計算する

それでは実際に安全在庫を求める公式に当てはめて安全在庫数を求めます。安全在庫を求める公式は従来の需要実績の変動から求める安全在庫の公式と同じです。

この公式は従来の需要変動を元にする安全在庫でも予測誤差に基づく安全在庫でも同じ
安全在庫設定数を算出する公式

安全係数は電卓で計算することはできないため、早見表を利用します。欠品の許容率は5.0%をよく使うので、この値だけは覚えておくと便利です。

欠品許容率5.0%の時の安全係数k=1.65

仮にこの品目のリードタイムが10日だとします。リードタイムは発注間隔と輸送リードタイムの合計、つまり発注してから入庫するまでの期間のことです。例えば、毎週月曜日に発注し、入庫するのが翌週の木曜日であればリードタイムは10となります。

Is = 1.65 x 5.69 x 3.16 = 約 30個

つまり、今回の例では、30個の安全在庫を持っておけば95%の確率で欠品にならずに済むと言う事が言えます。実際に持っておくべき在庫はリードタイム期間中の需要をまかなうのに必要な分と安全在庫の合計です。例えば、現在から向こう10日、毎日35個の需要があると予測を立てるのであれば、35個/日 x 10日 + 30個 = 380個 となり、380この在庫を持てば良いことになります。なので次回の発注は現在の在庫と380個の差分となります。380個まで補充すれば良いわけです。

エクセルで出力する

当たり前のことですが、ここまでの手順を毎回電卓で計算するのは大変です。エクセルで計算式を入れておき、自動でいくつまで在庫を補充すれば良いかが求まるようにしておきましょう。発注時点で何個まで補充するのかと現在の在庫数の差分を出して、発注数量が求まるようにしておくとさらに便利ですね。

予測誤差に基づく安全在庫の算出方法まとめ

この記事の内容をまとめると下記の通りです。

  • 一般的な安全在庫の考え方は需要実績の変動を元に計算する
  • このブログでは需要実績の変動ではなく、需要予測と需要実績の誤差に着目して安全在庫数を算出することを推奨する
  • 需要予測の精度を評価するには標準偏差というバラつきの概念を利用する
  • 予測誤差のバラつきとは時をかける少女のように、同じ場面を何回も繰り返した場合の誤差の分布のことである
  • 実際には同じ場面を何度も繰り返すことはできないので、過去の実績でその誤差の分布を求めることになる
  • 安全在庫を求める公式は従来の安全在庫の求め方と予測誤差を元にした安全在庫で同じで、違うのは標準偏差の部分のみである

以上、的確な安全在庫指標を採用し、意味のある、適正安全在庫レベルを求められるようにしましょう。

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安全在庫|従来の考え方と予測誤差に基づく考え方の違い

供給数、つまり需要数が予想より多かったり少なかったりすれば必要な調達数は変わってきます。しかし、調達数も調達タイミングもそう簡単に買えることができるものではありません。今回は、需要変動に対応するための安全在庫と言う考え方について解説します。

目次

安全在庫の考え方

【在庫管理】PSIシートから調達数量を求める簡単な考え方で入庫数を求める方法を解説しました。この方法は供給予定数通りに在庫が減っていったときに、どの程度の数量を補充すれば良いかと言う計算方法でした。計画的に在庫を払い出せるのであれば問題ありませんが、小売業などでは供給量は需要によって変化するため、在庫が当初の想定より早く無くなったり、減る速度が遅く、在庫が余り気味になったりすることがあります。今回はそのような需要の変動に対応する安全在庫の考え方について考えていきます。

供給見込み(=需要予測)と実績値の差を吸収するのが安全在庫

下のPSIシートはある日(第1日目)に在庫が100個存在し、毎日10個ずつ供給(=出庫)した時のものです。

10個ずつ払い出されていくPSIシートの11日目まで
100個の在庫が10個ずつ払い出されていくPSIシート

このPSIシートの在庫数量をプロットし、グラフにしたものが下の図です。

初日に100個の在庫があり、毎日10個ずつ在庫が減少したときの在庫推移グラフ
在庫推移グラフ

現在は1日目が終わったところで、明日からの在庫数量予測だと思って下さい。今、在庫が100個あって、無効10日間の需要は毎日10個という予測を立てているという状態です。

そして、10日後(=11日目)が終わったときに、在庫の推移を検証することにしました。蓋を開けてみると、日々の供給数が15個と需要予測を上回る在庫の払い出しがありました。このときのPSIシートは下記の通りとなります。

在庫が0以下になるまでの期間が短くなっている。
日々の供給量(出庫)が15個だった場合のPSIシート

供給実績が需要予測を上回り、予定より早く欠品した
供給実績が需要予測を上廻った場合の在庫推移グラフ(オレンジ色のグラフ)

この場合は7日後(=8日目)で在庫が0となり、10日後(11日目)には50個の欠品となっています。安全在庫とは、このような需要予測違いに基づく欠品を防ぐ為のものです。

結果論ですが、この場合、あと50個余分に持っていれば、10日後まで欠品することはありませんでしたので、50個の安全在庫を持つべきだったと言えます*1

結果論ではなく、調達数検討のための安全在庫を計算で求める

前項までで安全在庫の考え方が分かりました。それは、需要予測数量と実際の供給数量のギャップを埋めるという考え方でした。しかし、前項では結果論で、あといくつ持つべきだったと分かっただけです。これでは将来の調達数の検討には役立ちません。そこで、今回は過去の需要予測の精度から安全在庫を求める方法を考えます。

過去の需要予測と供給実績がどのぐらいずれていたか、と言う考え方

もし私たちが神様で、全ての商品がいつ、何個の需要があるかを完璧に分かっていたとします。その場合、需要予測と供給数量に差は無いため、安全在庫はゼロでOKです。つまり、次回の入庫計画までの日々の需要予測の数量の合計数だけ在庫を持っていれば良いわけです。

このように需要予測と供給数の差をまかなえれば良いので、これまでの経験から言って>どれくらい需要予測が外れて供給数と差が出ると予想されるのかを求めればいい、と言う事になります。これが大事な考え方です。

安全在庫数を求める計算式

前項で考え方が分かったので具体的に計算していきます。
需要予測と供給数がどのぐらいズレるハズかは次の計算式で求めることができます。

安全在庫は安全係数と標準偏差とリードタイムの平方根の積で求められる
安全在庫数を求める公式

計算式が出てきたので身構えてしまった方もいるかも知れませんが、実務で使う上では雰囲気を理解すればOKです。Isというのは今回求めたい安全在庫数量です。在庫を意味するInventoryと安全を意味するsafetyの頭文字をとってIsとしました。kは安全係数という数値です。後ほど説明しますが、大きいほど安全つまり欠品になりにくいパラメータだと思って下さい。なお、パラメータとは自分で設定する数値です*2。σは標準偏差という数値でばらつきを表す数値です。これも後ほど説明します。tは補充から次の補充までの期間です。

ざっくり言うと、

  • 欠品しにくい程、
  • 需要のばらつき(あるいは誤差のばらつき)が大きい程、
  • 補充から補充までの期間が長いほど、

沢山の安全在庫が必要である、と言う事です。これくらいのざっくりした雰囲気で捉えておけばOKです。以下、kとσについて解説します。

安全係数k

安全係数とは高ければ高いほど欠品しづらいパラメータです。例えばある期間に在庫がなくなって欠品になってしまう確率が5%なら1.65、1%なら2.33となります。ここで欠品になってしまう確率と言われてもピンと来ないかも知れません。

時をかける少女という小説、またはアニメがあります。あの作品のように同じ場面を何度も繰り返し体験できるとして、100回繰り返したときに需要量が在庫量より多く欠品になってしまう確率を欠品率と言います。その数値が上述の確率です。

標準偏差に関する一般的な解説

当然のことながら、この記事の読者の皆さんは安全在庫の求め方や考え方について一般的ないわゆる正しい考え方を知りたいはずなので、まず、それを解説します。

需要は変動するものであり、ずっと同じ需要数量が維持されることはありません。しかし需要の変動幅が小さいものもあれば大きいものもあるはずです。需要の変動が小さければ欠品になる確率は低く、需要の変動が大きければ欠品になる確率は高くなると考えます。

そこで、過去の需要実績(欠品がない場合は供給数の実績)の記録をみて、その変動の大きさを求めると言う考え方が取られます。

言い方を変えると変動のある過去の需要の実績の真ん中を取った場合、多い方にも少ない方にも同じくらい過去の実績が分布しているはずです。そしてそのばらつきが大きいほど需要変動が大きく大きな安全在庫が必要と考えます。

需要実績の変動は正規分布に従うと言う前提
需要実績の変動は正規分布に従うという図

これをグラフにしたものが上の図です。需要実績のど真ん中の数値が真ん中です。縦軸は件数です。真ん中当たりの需要実績数の件数が最も多く、それより需要が大きければ右側、少なければ左側に分布し、だんだんと真ん中の値から離れるほど件数が少なくなっていきます。

たとえば需要実績の真ん中の値が100個だとすると、90~110個の需要実績は何十件もあるが、20個や180個といった需要実績は数件しかない、というような感じです。

需要変動が少なく安定した需要の商品ほど、この釣り鐘型のグラフがとがった形になります。とがった形なほど需要変動が少ないため、安全在庫が少なくて済むという考え方です。この需要変動具合が今後も続くという前提のもと、安全在庫の計算式に当てはめて求めていきます。

このブログで提唱する、予測誤差に基づく安全在庫の考え方

前項が一般的な解説です。私がインターネット上で検索して調査する限り、安全在庫に関する解説はすべて、需要実績の変動に基づいた標準偏差を求め、安全在庫数を算出しています。

しかし、この記事では需要変動は安全在庫と無関係であるという立場を取りたいと思います。再度述べますが、この考え方は一般的ではありません。あくまで私の個人的な提唱です。一般的な考え方は前項の通り、需要予測の変動に基づく標準偏差を使います。それでは、具体的にどう考えるかの解説に移ります。

まず、もしあなたが神様のように将来を完璧に見通す能力があったと仮定します。その場合、需要予測が完璧になる為、どんなに需要が変動しようとも、完璧な供給計画を立案することができます。需要予測と同じ数量を入庫させれば良いだけだからです。この場合、需要予測が外れることがないため、安全在庫はゼロで良くなります。

つまり、需要予測を行い、需要実績との差を比較していけばどの程度の需要予測の精度を取ってきたかが分かります。この、需要予測と需要実績の誤差のばらつきを安全在庫に活用しよう、というのがこのブログの立場です。

これまでどの程度の精度で需要予測を行ってきたかが分かれば、今後も同程度の精度で需要予測できると仮定して安全在庫を求めることができます。

実際の計算は過去の需要予測と需要実績の差を利用するのですが、概念的には先述の時をかける少女の考え方を使います。

時をかける少女のように何度もその需要予測と供給量の検証をすると需要予測が妥当な場合、需要予測と供給量の差異の分布は正規分布のグラフを描くことになります。下の図をご覧下さい。

正規分布に従う需要予測と供給量の差異の分布
需要予測が妥当だった時の需要予測と供給量の差異の分布。正規分布となる

グラフ自体は同じものですが、今回は横軸の意味合いが異なります。真ん中が需要予測と供給数がぴったり一致した所です。妥当な需要予測ができていれば、需要予測と供給数が一致する部分の件数(時をかける少女のように同じ場面を何度も繰り返した場合の件数)が理論上一番多いはずで、外れれば外れるほどその件数は少なく分布するものとします。

先ほどと異なり、需要予測と需要実績の差が少ない、つまり需要予測精度の高い商品ほどこのグラフは鋭利になります。さて、このグラフを積上げグラフにしてみます。どういうことかというと縦軸の件数の累積グラフをこのグラフに重ねてみます。

正規分布と累積分布関数を重ねて表示すると95%の位置が大体分かる
累積件数のグラフを重ねた。需要予測が需要実績を上回るのが95%の位置を求める

青線が需要予測と需要実績の差異の分布です。一つ前のグラフと同じですが、累積のグラフと重ねたので小さく見えています。そしてオレンジ色の線が青線の累積を表しています。累積のグラフを描画することで、95%の位置が分かりやすくなりました。赤太線を記入した部分です。

これは何を意味しているかというと、需要予測が需要実績を上回っていれば、それは欠品にならないので、全需要予測と需要実績の差異のうち件数ベースで下から95%を網羅する部分までを拾ったと言うことです。

需要予測は誤差が出て当たり前という前提の元、その差異が95%に収まる様な安全在庫を持とう、等位考え方です。ちなみにこの方法で計算すると9割以上の品目が、一般的な安全在庫の考え方で求める安全在庫数より少ない安全在庫数となります。

そして、これは私の私見ですが、一般的な方法で求める安全在庫数は経験的に数量が多くなりがちだと感じています。よってこの計算方法でうまく廻ると考えています。

*実際に適用して損害が出た場合の責任は負えませんので、この考え方を採用する場合は自己責任で、しっかり検証を行ってから実施して下さい。

<関連記事>

*1:今回は安全在庫の考え方にフォーカスしているため、このような書き方をしていますが、本当は50個の安全在庫を持つべきだったとは言えません。なぜなら需要予測が外れすぎなので、そちらを改善すれば,より少ない安全在庫で済むはずだからです。

*2:どのようなkを設定するかは経営判断です