日々の業務を改善するにはどのような手順を踏めば良いかきちんと考えたことはあるでしょうか。改善と言っても何をもって改善と言うかによって施策は異なります。しかし、アプローチは意外にも共通点が多いもの。
今回は様々な業務改善に応用が利く汎用的な手順について解説していきます。
目次
生産性を向上する為に知っておくべき落とし穴と、知っておくだけで回避できる知識 - Mutable_Yunの業務改善ブログで説明した通り、生産性向上の本質は粗利益率を高めることです。業務時間の削減そのものが本質では無く、そこで空いた時間を商品の価値向上や原価低減のための活動に割くことが大事という、大きな視点を念頭に置きつつ、業務改善の手順について見て行きましょう。
全体像を掴む
まずは業務改善の余地がある業務を探すことから始めます。利益率向上につながらない部門の効率化は、よっぽど残業がひどいなどの場合で無ければ、残念ながら後回しにします。ホワイトカラーの生産性向上と言って、仮に自動化を推進しても浮いた時間を営業に回せるわけでは無いからです。「楽になったわー」というだけの人の業務改善は最後の最後です。
この視点を持つだけでも、誰がどんな仕事をしているのか、部門全体の全体像を掴むことにつながります。
部門の全体像を掴むと、利益率の改善につながる部分が分かるので、業務改善の対象部分が判明します。それから次に改善の方法を考える段階に移っていきます。
対象の業務の目的を知る
上はおにぎりを生産して販売する事業のモデルです。この例は経営者視点になっていますが、ひとつの業務部門に置き換えても構いません。おにぎり販売モデルが説明しやすいだけです。自分の部署に置き換えて、いろいろな人の業務を書き出してみます。
すると、前工程や後工程、業務のつながりが見えてきます。するとそれぞれの業務の目的が分かってきます。米とぎという言う工程は、米炊きという後工程につながっており、最終的におにぎりを生産する、と言う事が目的と言う事が分かります。
やめたらどうなるか考える
目的が分かれば、やめるとどうなるかを考えることが出来ます。一方、何のためにやってるのかよく分からないが脈々と諸先輩方から受け継がれたきたいわゆるレガシー業務もあると思います。そういった場合、やめるとどうなるかを考える事で、本来の業務の目的を見つけることができる場合もあります。
おにぎり販売事業で米とぎをやめたらどうなるでしょうか。米を炊くことができません。米が炊けなければおにぎりが生産できません。いや、ちょっとまてよ、スーパーの惣菜コーナーに既に炊けているご飯があるではないか、と発想が膨らんでくれば業務改善案として書き留めておきましょう。
改善施策の立案のアプローチ方法を考える
業務改善の本質は粗利益率の向上です。売価を上げる施策を考えるのか、原価低減する施策を考えるのか。これを決めてからでないと、対策案の検討に移れないと言う事はありません。
ただ、一方向からしか見ないと視野が狭くなるので、売価を上げる施策と、原価低減の両面を見る事を忘れないようにしましょうと言う事です。両方を同時に達成出来たり、原価低減の施策が結果的に売価向上につながるといった妙案が出てくればラッキーです。ラッキーを逃さないように視野は広く持つとよいと思います。
同時に、先になにかアイデアが思い付いたら、それが売価向上か原材料費低減なのか、どちらの施策になっているかチェックしましょう。
炊けているご飯を買ってくるアイデアの目的が人件費削減しか思い付かないのならなら、没にしましょう。売価にも原材料費にも影響しないからです。
炊けたご飯を買ってくることで米の仕入れがなくなり、水道光熱費が削減できる、と考えられれば、候補として残しておきます。
吟味して、仮説が正しいか確認する
米とぎをやめて、炊けてるご飯を買ってくる。それにより米とぎだけで無く、米を炊く工程も削減できる水道代の光熱費も削減できそう。ここまではOK。しかし、スーパーに売っている炊けたご飯は米より大分高かったので、水道代と光熱費の削減額を上回ってしまいました。失敗です。
検証して没にするのはOKです。アイデアが出てこなければ没にすらできませんから、たくさんアイデアを出していきましょう。
くどいですが、米とぎをやめると人件費が浮く、は間違いです。人件費は付加価値に含まれています。それにそんな簡単に人はクビにできません。浮いた時間でビラ配りをする、ならOK。時間削減で無く、その時間で何をするかが大切です。
ようやく個別の課題に移る
システム導入や業務フローの改善に移るのはここまでできてからです。システムありき、自動化ありきでは、導入すること事態が目的となってしまうことが多々あります。
おにぎり販売事業モデルではそれぞれの担当者(図の青四角)の役割を把握し、業務の流れを理解する事で初めて、付加価値を生む場所が分かり、業務改善すべき担当者が分かります。
自動化のためのプログラミングを覚えるのは大事です。しかし、そうした技術だけが先行すると、発言力のある人、部門の下請け状態になってしまいます。どの業務に対して業務改善を行うか、という視点を持った上で武器としてプログラミングや物流、在庫管理などの業界の知識があれば、下請けでは無く、主体性を持って業務改善提案ができるようになっていきます。
まとめ
全体像を把握し、業務改善すべきポイントを見極める。プログラミングや業界の知識は武器になるが、大きな視点を持たないと下請けになる。(下請けはつまらないです。やらされ仕事。改善提案を出して、自らその改善を請け負う、と言う方が面白い!)