ゆんの業務改善ブログ

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ISO9001 運用を形骸化させる組織の特徴と有効な活用法

みなさんのお勤め先はISO9001の認証は取得していますか?認証を取得していなくても、考え方は業務改善に役立つので、うまく活用して継続的に改善するサイクルが定着した体質作りを目指していきましょう。うまく考え方を取り入れれば、プライベートにも活用することもできます。

目次

ISO9001 運用を形骸化させる組織の特徴と有効な活用法について

ISO9001とは

日本品質保証機構のウェブサイトによると、ISO9001とは、

一貫した製品・サービスを提供し、
顧客満足を向上させるためのマネジメントシステム規格

とされています。製造業でもサービス業でも何でもいいのですが、継続して顧客満足を向上させていくための考え方を定着し、それを運用する管理システムのための規格と言う事です。

基本的な考え方

日本品質保証機構のウェブサイトの「規格の狙い」を見ると、下記のように書かれています。

ISO 9001は、次の2点を実現するための品質マネジメントシステムの要求事項を定めています。

  • 一貫した製品・サービスの提供
  • 顧客満足の向上

品質マネジメントシステムと言う言葉が出てきました。簡単にこの言葉の意味を解説しておきます。

  • 品質とは

「狙いの品質」という言葉があります。製品でもサービスでも顧客に提供するモノには価値があります。どのような価値を提供するのか、というものが設定されているはずです。携帯電話では通話ができる、とかレストランでは食事を提供する、と言ったようなことです。高いけどうまいとか、うまさでは負けるけど、安いとか。この場合、うまさでは負けるけど安い店の品質が低い訳ではありません。そこを狙っているので、それでいいのです。

その狙いの品質に対して、実際に提供されたモノ、サービスがどの程度近いかの度合いを品質と言います。狙いの品質と品質を混同しないようにしましょう。

狙いの品質を目標と置き換えれば、目標を達成する事が品質が良いと言う事になります。

  • マネジメントシステムとは

マネジメントは管理することです。システムとは体系です。つまりマネジメントシステムとは「管理して運用する仕組み」と言うことができますね。

つまり、品質マネジメントシステムとは継続的に目標を達成していくための仕組みと言えます。概念的にはさらに、目標が達成出来なかったときにどう修正するのか、とか、目標達成のための手段は適切か見直す、と言った部分も含みます。改善や改良を進めどんどん良くしていく仕組みといった感じですね。

注意したいのはISO9001は目標の達成そのものを求めているわけでは無く、目標の達成をする為の仕組みが作られていて、それが機能していることを求めています。ここは勘違いしやすいので気をつけましょう。目標達成しているからISO9001を満たしていると勘違いしている人を多く見ています。

次に、要求事項についてです。文字通り要求されていることです。言葉が堅いのでISOっぽいなーと思ってしまいます。単にやるべき事だと言い換えても良いと思います。

  • 筋トレを例にした具体的な説明

筋肉をつけたいという目標を立てたとします。そのために筋トレを日常的に行う事に決めました。筋肉をつけたいと言う目標は曖昧なので、筋肉量が体重の○%以上の状態になる、という数値目標を決めます。この目標を品質目標と言います。最終的に達成したいことです。

次に、品質目標を達成する為に腕立て伏せ10回を毎日行う事にしました。この、毎日腕立て伏せ10回を行う、というのがプロセスです。プロセスで決めたことが満たせないと言う事は、達成に遠のくと言う事です。ここで注意したいのは自分できめたプロセスを達成する事とISOの要求事項を混同しないことです。自分のプロセスは毎日欠かさず腕立て伏せ10回を行う事です。これができなくなるとISOの要求事項を満たしていないかと言うとそうではありません。ISOの要求事項は継続的に改善する仕組みが整っていることなので、もし腕立て伏せ10回が途切れてしまったときに、原因を突き止め、次は途切れないように対策をする、と言う改善が図られていればOKです。逆に、達成出来なかったときに、未達成のまま放置するとNGです。

そして目標の日まで腕立て伏せ10回を継続しました。しかし、筋肉マッチョにはなれなかったとしましょう。自分で決めたプロセスを日々達成したのに、結果には到達できませんでした。ここでも、原因の追及と対策が必要です。例えば目標が高すぎたのか、あるいは腕立て伏せ10回が少なすぎたのか、と言った事です。この反省の結果、腕立て伏せの回数を20回に増やす事にすると、それは業務の改善が図られたと言う事になり、改善のサイクルが回っていると言えます。このような改善のサイクルを回すことが「一貫した製品・サービスの提供」、「顧客満足の向上」につながると考えられているわけです。

よって、品質マネジメントシステムの要求事項はこのような改善のサイクルを回すこと、と言っても良いと思います。

ISOの要求事項と自分で決めたプロセスを混同しないようにしましょう。

実務への応用

目標に向かって、必要なプロセスを設定し、その実行結果を確認し、改善を図ると言う一連の流れを実務に落とし込んでいきます。ここに罠が潜んでいます

形骸化の罠


この一連のサイクルが回っていることを定期的に確認するわけですが、ココに罠があります。ポイントは筋トレが途切れたときに、何故途切れたのかという原因を突き止め対策をすることで、改善につなげます。一連のサイクルの中でキーとなる部分です。

ここが大事なのですが、突き止めた原因やその対策を記録に残しておく必要があります。こうして記録に残すことにより、1年後に筋トレを継続したのに筋肉マッチョになれなかった時、過去の改善が間違っていなかったか、というプロセスそのものの改善につなげることができるからです。

しかし、この何のために記録に残すのか、と言う事が分かっていないと記録することの意味が感じられず、負担になります。記録することそのものが仕事のように感じてきます。ISOの認定を受けるために記録をつける、と言う事になってきます。そして、ついに改ざんが行われます。筋トレをサボってしまったのにサボっていないことにします。これで業務の改善ができるはずがありません。それでも一見改善のサイクルが回っているように見えてしまうので、根本的な何のためのISO9001と言う事を忘れて、作業そのものが仕事となり、形骸化していくのです。

形骸化させる組織の特徴

自分のことを忙しいと思っている人が多い組織はこの罠に陥りやすいと思います。現業が忙しいのに、記録をつけることなんてやってられるか!って感じ。

逆ですよ。忙しいからこそ、業務改善を図り、品質目標を継続的に達成するプロセスを作り改善し効率化し、より高い品質を目指していく必要があるのです。

有効な運用方法

ISOを形骸化させずに有効に運用するには、どっぷりとISOワールドに浸かってしまうことです。目新しい手法ではありません。長く運用されてきたと言う事は、それなりのノウハウがあるのです。諸先輩方がやってきた業務の回し方があるのであれば、そのエッセンスを理解し、活用し尽くす位のマインドでやれば形骸化しません。

有効な運用のコツなどというモノは無く、信じてやってみる、と言う事から始めるのが良いです。そのうち、記録につけたり改善した結果を残したりするのが定着してくると面白くなってきます。品質記録に愛着がわいてきますよ。

プライベートへの活用

プライベートでISOの認証を受けることはありませんが、考え方は取り入れるようにしています。私はプライベートも仕事も同じ手帳で管理することにしていて、月初に今月の目標を書き、ToDoに落とし込みます。できた、できなかった、次はどうやろう、と言うのをプライベートでも書き込んでいきます。

手帳を単なるスケジュール帳としてでは無く、ISOの品質記録的にも利用しているんですね。例えば旅行に行くのに渋滞に巻き込まれたから、30分早めに出るべきだった、みたいなことを記録して次に生かす感じです。

以上、ISO9001で運用を形骸化させない方法と有効な活用法でした。押しつけられてやらされる仕事はつまらないものです。自分から業務改善のサイクルに取り組むことで、ISOを有効活用して楽しみながら業務改善していきましょう。

ISO9001の運用の形骸化の罠まとめ

以上の内容をまとめると下記の様になります。

  • ISO9001とは継続敵に目標を達成していくための品質マネジメントシステムの仕組み
  • 形骸化の罠は原因や対策を記録に残す所にある。記録に残す事が習慣になっていないと仕事のためのISOではなく、ISOの為の仕事になってしまう
  • より特徴的に言うと自分のことを忙しいと思っているような人が多い職場は、対策も行き当たりばったりでISOの運用が形骸化しやすい
  • ISOを有効活用するには、ISOの考え方にどっぷりと浸かってしまうこと
  • 品質マネジメントの考え方はプライベートでも使える

以上、ISO9001の運用を形骸化させない為の解説記事でした。

最後にひとつ、入門書をご紹介しておきます。「2015年版」とあるので古い本のように感じるかも知れませんが、本稿修正(2019/12/26)時点の最新のISO9001の改訂が2015年である為、この題名になっています。実際、第2版の出版2019年2月であり、この本の内容が古いわけではありません、

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