BIツールが雨後の筍のように出てきています。いくつか使ってみて思うことについて書きたいと思います。この記事は、特定のBIツールに関して考察するものではなく、BIツール全般の選び方について思うことです。BIツール導入を検討している方の参考になればと思います。
目次
BIツールを選ぶ前に知っておくべき事
そもそもBIツールとは何か
BIツールとはBusiness Intelligenceのことです。BIツールは経営判断やマーケティングなど判断に必要な情報を分析するツールとして、多くのシステムベンダーが提供しています。
各社が掲げている特徴として概ね下記のような特徴が挙げられます。
- 誰でも簡単な操作で知見が得られる
- 社内の情報を一元管理できる
- 得られたグラフや知見を社内で共有できる
つまり、データを一つのところに集めてグラフなり表なりにして簡単に見える化できるツールと言えるでしょう。BIツールとは何かわかったところで、結論から入りたいと思います。
結論
いくつかのBIツールを使ってみた私なりの結論を述べます。それは、【まずは使い慣れたツールでグラフを生成すべし】ということです。ここで言う使い慣れたツールとはエクセルやグーグルスプレッドシートのことです。
ビジネス領域や組織構成、規模、データの種類といったことによってBIツールを採用すべきかどうか、採用するのであればどのツールにするのかは異なります。まさに企業ごとの事情です。そこで、まずはエクセルなりグーグルスプレッドシートなり、普段使っているツールでグラフを作って見える化してみましょう、と言う事です。そして何も問題なくそれらのツールで分析ができるならそれでいいではありませんか。
逆に、もしできない理由があるのであれば、そこを解決する選択肢の一つとしてBIツールの導入を検討すれば良いのです。これが健全な検討順序だと思います。いちばん恐ろしいのは導入ありきになってしまうことです。
BIツールを使ってできることは何か
まず、市販のBIツールを使ってできる事について確認しましょう。BIツールを使ってできることはデータ分析の元データをそろえたり、グラフを生成する事です。BIツールそのものがデータ分析をしてくれるわけではないので、注意しましょう。
「AI搭載」というような文言を謳っているものがあります。それらの機能は、このデータとこのデータを組み合わせたら新たな知見が得られるかもしれませんよ、と関連性のありそうなデータの組み合わせを提案するだけです。
実務で使えるデータ分析結果を得るには2020年1月20日現在では、人の手によるデータ分析が必要だとの印象を私は持ちました。AIによるデータの組み合わせの提案が参考になることはあるかもしれませんが、AI搭載=すべてデータ分析が自動化できて最適化されて業績向上!という事にはならないので注意しましょう。
もう一度まとめておくと、BIツールでできることはデータをまとめたり、グラフにして見やすくするなどデータ分析の下準備をすることです。
市販のBIツールはあなたに特化したツールではない
当たり前ですがBIツールは汎用のソフトとして販売(もしくはサブスクリプション契約*1)されているため、あなたに特化したツールではありません。
BIツールを提供するシステム屋さんはあなたが欲しいグラフが円グラフなのか、パレート図なのか、折れ線グラフなのかは分かりません。あらゆるグラフや見せ方に対応する必要があります。必然的にツール自体が重いソフトになりますし価格も高額になります。一方、自分に特化したツールを機能を絞ってシステムを作ってもらうのも同じく高額になります。
この点においても、やはりまずはエクセルで自分が見える化したいデータを取り扱ってみると言う手が考えられます。エクセルで特定の形のグラフなりフォーマットを作っておいて、そこにデータの事前加工やデータを流し込むところをVBAやPythonで自動化しておけば、無償でお気に入りのデータをすぐに入手することができます。
BIツールを導入しても、一人ひとりが使う機能は1~2種類しかない点も留意しておきましょう。
BIツールとエクセルとの違いは何か
データを集めてグラフにするだけならエクセルと何も変わらないのではないか、と思った方は鋭いです。その基本的な機能に関しては、エクセルとBIツールで変わりはありません。
エクセルとBIツールで機能の方向性に違いがない事が分かった上で、違いに着目すると、下記の2点があげられます。
- 取り扱い可能なデータ量
- 共有する事
それぞれ、簡単に解説します。
取り扱い可能なデータ量
これはBIツールに軍配が上がります。クラウドなりオンプレミスなり、サーバーを用意する必要があります。BIツールのデータはサーバサイドで動かします。エクセルはそもそも行数が100万行+αくらいしかありませんし、実務的にはデータの種類にもよりますが、数万行~数十万行が限界だと思います。これはエクセルが太刀打ちできない部分です。
もし取り扱いデータがエクセルで太刀打ちできない、と言うのであればBIツールはデータ分析の有力な選択肢になり得ます
共有する事
もう一点は共有です。エクセルはメールでデータで配信することも可能ですが、大量のデータをメールで共有するというのは限界があります。もし、大量のデータをどこかで分析し、その知見を世界中のグループ会社のメンバーと共有するというグローバルな企業であればBIツールを検討する余地は十分にあります。
BIツールを選ぶ前に知っておくべき事まとめ
以上からBIツールを選ぶ前に知っておくべき事を次のようにまとめたいと思います。
- BIツールは見える化など分析を手助けするためのツールであってBI自体が分析してくれるわけではない
- 市販のBIツールはあなたに特化したツールではない
- まずはエクセルなど使い慣れたツールで見える化して見るべし
- 使い慣れたツールで見える化できない理由があるとき、始めてBIツールを検討するべし
- 導入ありきで進めないこと
- 有力な導入動機は①取り扱いデータ量、と②共有する機能
自分に必要な機能を正しく把握し、手元のツールで対応できないかを検証し、それでもムリだったらBIツールの検証を行いましょう。安い買い物ではありませんからね。
*1:サブスクリプションと言っても従量課金制ではなく、月間や年間いくら、と言う契約です。定期購読期間中はキャンセルできません、と言う契約になっている為注意しましょう