新型コロナウィルスの影響もあり、世間で在宅勤務制度への関心が高まっています。企業活動継続のためのリスク回避と言う面から重要性の高まっている在宅勤務制度について、実際に在宅勤務制度を利用した立場からその感想と、生産性は高まるのかについて紹介します。
また、政府が大規模なイベントの延期、自粛の要請や全国の小中学校を休日にする要請を発表した事により、企業の対応も分かれます。有給休暇とする企業、無給休暇とする企業、在宅勤務を推奨する企業、対応を取ることができない企業と様々です。初稿執筆時点では業務改善の視点のみでしたが、危機管理の観点から見た在宅勤務制度についても解説します。
在宅勤務制度を利用したことがない人や、会社として在宅勤務制度の導入を検討している方の参考になればと思います。
目次
在宅勤務の感想とわかったこと
実際に在宅勤務をした感想を書きます。普段担当している業務によって在宅勤務の有効性は異なる事が想定される為、まずは私の立場の説明から始めたいと思います。
私の業務内容と立場
私は大手製造業で内勤をしています。業務改善がメイン業務で自動化やデータ分析、業務プロセス変更による生産成果以前などを担当しています。性別は男性。年齢は30代半ばで既婚です。配偶者は専業主婦です。小学生と幼稚園生の娘がいます。
この私の立場と、共働きで娘を幼稚園荷送り出してから会社に行っている主婦の方とは大幅に感想が違うものと思います。そういう立場の違いにも想像をはせながら、振り返っていきます。
最低限のITツールが使える事が前提
在宅勤務ではPCを使って自宅で作業を行います。そのため、ノートPCからネットワークに接続し、社内のシステムに接続する必要があります。このあたりの事情にいて確認していきましょう。
会社のPCを自宅でインターネットが使える環境にする
まず、最低限のITツールが使えることが前提。今時インターネットにつながずにできる仕事などほとんど無い。というわけで、会社のノートパソコンを自宅のwifiに接続する必要があります。ひょっとすると、家のパソコンは業者に設定してもらったので、自分では何もしたことがない、と言う人は、wifiに接続する為のパスワードが分からない、など基本的な設定ができないかもしません。自宅wifiのパスワードや、SSID*1はどこを見れば分かるのか、といった事は予め調べておく必要があります。
社内のシステムに接続する為にプロキシを通過するためのパスワードの確認やVPN接続をするのであればその設定を予め済ませておく必要もあります。ただノートパソコンを家に持って帰ってくればOKと言うわけではありません。
携帯電話でテザリングするのであれば、どの程度の通信容量まで可能なのかを確認しておいたり、現時点の通信容量を確認する方法も調べておきましょう。
在宅勤務は当日のマインド的にも結構大変
私の場合はメンタル的に相当追い込まれました。それが集中力につながりいつも以上の成果を残せた、仕事がはかどったといえます。
どういうことかというと、人に見られていない分、しっかりと目に見える形で成果物を残さないといけないという脅迫感といういうかプレッシャーのようなものを背負って仕事をすることになったと言う事です。会社で仕事をするよりも遙かに集中力が高かったと思います。実際は誰にも見られていないにもかかわらず、しっかりと成果を残さねばならないという思いが、常に誰かに見られているような気がずっとしていました。この間隔は実際に在宅勤務制度を利用してみないと、感覚的に理解するのは難しいかも知れません。
また、家事のために在宅勤務制度を利用している主婦の方には当てはまらないかも知れません。というか、そもそも私だけかも知れません。
脱線しますが、集中力を高めるには、「誰かに見られているような気がする」間隔を意図的に作り出すとイイと思います。集中力を高めるきっかけというか、入口に立ちやすくなります。
「部下の管理ができない」はまるっきり見当違いの意見
在宅勤務に反対な責任者の意見として、部下の管理ができない、と言う人がいます。それは見当違いだと言うことが分かりました。自分自身が在宅勤務をして感じたのが、サボるどころかむしろプレッシャーでした。
どちらかというと、サボるより、サービス残業とかそっちの方を気にする方が良さそうです。それにサボる人は、在宅勤務でなくても、会社にいても既にテキトーに手を抜いていますよ、と思います。それは在宅でも自宅でも変わらないのではないかと思います。
リスク回避としての在宅勤務
在宅勤務は働き方改革や多様性だけでなく、リスク回避の観点で役立つことが分かりました。政府が2020年3月2日より全国の自治体に対して小中高校の休校を要請したため、子供を持つ親が在宅勤務などの必要に迫られたからです。在宅勤務ができる様な体制を整えておくことは、企業として事業を継続するための責務担ったと言って良いでしょう。近年、風水害による鉄道の計画運休も浸透しており、リスクに対して予め備え、被害を最小限に留める対応が必須となっています。
在宅勤務を行う事ができると言う事は、会社への移動が必要でなくなるというシンプルな理由により、自宅で働く事を可能にする制度です。これは是非とも進める必要があると言えます。これまで生産性向上に役立つか、と言うことが議論の対象であった制度がリスク回避の観点から必須の制度となってしまったのです。つまり、普段から利用しようと思っていなくても、いざとなればすぐに利用できる体制を敷く必要があります。
そして、私の在宅勤務経験から言うと、いきなり在宅勤務は余りうまくいくとは言えません。一ヶ月に一度は自宅から会社のネットワークに接続する練習をする、電話会議システムの使い方に慣れておく、家族の理解を得ておく、と言った様なことが必要となります。つまりリスク回避のための在宅勤務はいきなりはできないので、普段から実行して備えておく必要があります。
どうせ普段から備えておく必要があるのであれば・・・、そうです。より効率よく在宅勤務制度が利用できるように工夫すべきなのです。【在宅勤務は導入可否を検討する】という段階から、【より効率よく利用するにはどうするか】と言う議論をする段階に移ったと言えるでしょう。
*1:アクセスポイントの名前。ここではざっくりとwifiの名前、と言う理解でOK