ゆんの業務改善ブログ

①生産性向上 ②業務改善 ③自動化 について情報発信しています。VBAプログラムは本当の初心者から他のアプリケーションを呼び出して使う上級者的な使い方まで幅広いレベルで解説していきます。

属人化|業務改善関連用語事典

属人化と言う言葉を業務改善の切り口から解説します。

目次

概要

属人化(ぞくじんか)とは作業の出来映えが人に依存するようになることを言います。仕事の仕上がりが人によってバラつきが出るため、望ましくない意味として使われる文脈が多い単語です。しかし、この解説では属人化を一概に悪いものと決めつけず、避けるべき場面やそうでない場面を極力客観的に捉え、対策を検証していきます。また、人に依存する度合いを表す表現として属人性という言葉もあります。属人性が高いと言うような使い方をします。業務にはそもそも業務の属人性が高い性質のものと、本来的には属人性が低いものが存在します。以下にそれぞれ具体的に例を挙げて説明していきます。

属人化の例

業務が属人化している例を挙げます。本来的に属人性が高い業務は属人性が高くても問題無い場合があります。その場合も属人性を下げる方が良い場合もあります。逆に本来的に属人性が低い業務であるにもかかわらず、属人化が進み、属人性が高くなっている場合は問題です。本来的に属人性が高い業務から順に紹介します。

分析・提案業務

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過去のデータやマーケティングによって得た調査結果を分析する業務は損人生が高い業務の代表です。よって、その分析を元に提案を行う業務も同様に属人性が高くなります。業務の一環としてデータの分析を行う事務職でも、データ分析の専門家であるデータサイエンティストでも同様です。

データ分析の属人性が高い理由は分析結果に解釈が伴うからです。データ分析を行うための処理は同じでもその結果を解釈し意味を与えるのは人です。そしてその分析を依頼した人が何を目的としてデータの分析を依頼したのかによって、行われる解釈や提案は異なります。誤解を恐れずに言うと、データ分析は決断を後押しする手段です。そのためデータ分析と提案は族院生が本来的に高い業務だと言えます。そしてこの業務の属人性が高くて許されるのは、その分析者が依頼者に信頼されていて、分析の目的が決断を後を押しする場合に限ります。

一方、属人性が高くて許されないのは分析を行うためのデータの加工です。前処理と言います。データ分析は元のデータの欠落や間違いを修正する部分は誰が処理をしても同じ結果とならなければなりません。例えばデータの欠落を補う際にはその欠落をどのように補うのか、レコード自体を無視するのかと言った事は、ルールとして定めておくべきであり属人化は避けるべきです。

あくまで属人性が高く手許されるのは解釈の部分であって、分析のためのデータの加工方法は属人性が高くてはいけません。

顧客対応

営業職やクレーム対応と言った業務は本来的に属人性が高い業務です。人と接する事自体が仕事のため、人間力が問われるからです。営業成績No1や神対応と言った様に、素晴らしい仕事にはその人にしかない魅力や技術が詰まっており、なかなか人がマネできるモノではありません。

一方、本来的に属人性が高くても、マニュアルを作成するなどして標準化を図ることでボトムアップを図ることが可能です。スキルの高い人の特長を潰さないようにしつつボトムアップを図るためにガイドラインを制定するなどして全体の質を底上げする施策を打つ事が重要です。

資料作成

前項までは本来的に属人性が高い業務でした。ここからは本来的に属人性が低い作業が属人化によって人への依存度が高まる例を説明します。資料作成は顧客への説明や会議資料、実績まとめなどのために行う業務です。定点観測として決められた方法で実績を決められたタイミングで測定する事でデータ分析が可能となります。

一つ目の項目で説明したデータ分析と異なる点は、データの種類とデータのまとめ方が決まっている為、誰がやっても同じ結果になるはずである点です。誰がやっても同じグラフなり表なりができるからこそ、その後の分析の質が担保されます。しかし、資料作成は属人化が起きやすい作業だと言えます。

その理由は資料作成に使うアプリケーションがエクセルやパワーポイントと言った操作スキルに左右されるものだからです。特にエクセルは上達しようと努力する人とそうでない人で実力に差が付きやすいアプリケーションです。この差は作業時間だけでなく、ミスの多さやグラフや表の見栄えにも影響してしまいます。

資料作成の属人化を防ぐには、自動化をするのが有力な対策となります。毎回同じ種類のデータを同じ方法で処理して資料を作成するのであれば、まさに自動化の出番です。顧客に新商品を提案する為の資料作成は自動化できませんが、定点観測の資料であれば自動化する事を検討しましょう。エクセルのデータ加工もパワーポイントによる資料作成もVBAで自動化を行う事が可能です。

倉庫や工場の作業

倉庫や工場では品質を安定させる目的で細かく作業手順が決められています。しかし、実際の現場ではきっちりとマニュアル通り現場が作業しているとは限りません。例えば倉庫作業では包装作業が手順書と違う手順で作業で行われている場合などがあります。

このように手順書が守られないことによって起こる属人化は避けるべき属人化の代表例です。手順書が現場で守られない理由は、面倒だからです。何度も作業を繰り返しているうちに自分なりのコツを掴み、作業がアレンジされていきます。そしてだんだんと手順書から作業が乖離して言ってしまいます。

このような属人化を防ぐためには、現場の作業者に手順書の改訂を提案してもらいそれを評価することが有力な対策となります。手順書より良い方法があるのであればそれを標準にしてしまえばいいのです。そして、その提案を評価しモチベーションにつなげるようにします。一方で、勝手に作業方法を変える事は品質の低下につながる事を定期的に教育していく事も重要です。

属人化のデメリット

属人化によって引き起こされるデメリットを解説します。なお、本来的に属人性が高い業務など属人性が高くても問題にならない場合もありますが、結果的に属人化していても問題ない例があるだけで、属人化する事自体によるメリットはありません。

欠員に弱くなる

属人化すると言うことはその人がいないと業務が進まなかったり、他の担当者が代行すると作業の質が落ちたりすると言うことです。つまり欠員に弱くなります。欠員に弱いと言うことは柔軟に担当者を変更するなど機動的に環境変化に対応しにくい組織となっていると言う事です。特に、重要な業務が止まってしまう様な自体は避けなくてはなりません。

属人化している業務は作業手順が目に見える形でまとめられていないか、手順書があっても守られていないため、異動などで担当が変更になった場合に引き継ぎコストが高く付く事になります。この点においても機動的な組織ではないと言えます。

作業がブラックボックス化する

作業がブラックボックス化すると言うことは、周囲から見てもその作業内容が分からないと言うことです。このことは作業品質の低下を招く可能性があります。理由としては致命的とは言えない程度のミスがあっても周囲にはバレないからです。

属人化への対応

上記のようなデメリットがあるため、属人化が望ましくない業務においては標準化を防ぐ対策を積極的に打っていく必要があります。具体的には下記の様な標準化の対策が考えられます。

  • 手順書を作成する
  • 手順書を実態に合わせる
  • 自動化する

それぞれ説明します。

手順書を作成する

主にオフィスワークのうち定型作業について有効な施策です。この手順書の作成のコツは細かく動作を規定しないことです。最低限守るべきルールを決める、と言うくらいが望ましいと考えます。理由は、余り細かく手順を決めると結局いつか守られなくなる為です。そして、ルールは実務を通してよりよいものに進化させていくものです。そのため、余り細かく手順を決めて枝葉末節にとらわれないようにしましょう。

また,運用面で実用的なモノにするためには必ず実際にその手順書を利用する担当者に手順書策定に関わってもらうことです。押しつけられた感覚や勝手に自分の知らないところでルールが決められていたと言うような感覚があると、その手順は守られません。また担当者自身が決めたルールであれば責任感と当事者意識が生まれるため、ルールが守られやすくなります。

手順書を実態に合わせる

普通は、手順を守らない作業者がいる場合、作業者に手順を守るように教育、指導を行います。もちろんそれが一般的に正しいことが多いのですが、ここでは逆に手順書を実態に合わせるように改訂ができないか検討することを提案したいと思います。

理由は手順が守られないと言うことは、作業者にとって、ルールで定められた手順に不満を抱いていると言う事です。その手順が面倒だったり、意味を感じられなかったりしている訳です。そしてその不満が妥当であれば、手順書を改訂することは業務の改善につながります。

作業者に手順を守らせると言う考えもありますが、ルールに不満がある場合は遠慮無く申し出て、ルール改定を議論する様な職場風土を醸成できれば、それは改善力の高い組織と言えるでしょう。

自動化する

属人化を防いだり標準化を図る有効な手段が自動化です。作業そのものをボタン一つで完了できるようにすることで、作業そのものは誰が行っても同じ結果となります。よって自動化は時間の短縮だけでなく、作業の品質を一定にする効果があると言えます。

自動化する差異の注意点としては自動化するプログラム自体がブラックボックスになってしまう可能性があると言うことです。オフィスワークの自動化ではVBAやPythonといった自動化に有力なプログラミング言語がありますが、作業内容が変わった時にプログラムが改修できるよう、プログラミングによって自動化を図る場合は、一人ではなく複数人プログラミングができる人を育てる必要があります。

属人化まとめ

これまで属人化について説明してきました。内容をまとめます。

  • 属人化とは作業が人に依存する様になる事
  • 本来的に属人性が高い業務も存在する
  • 本来的に属人性が高い業務は属人化していても問題ない場合がある
  • 属人化していても問題ない場合でも、属人化する事自体にメリットはない
  • 属人化のデメリットは欠員に弱くなることと作業がブラックボックス化する事による作業品質の低下
  • 属人化の対応は手順書の作成、手順書の改定、自動化
  • 自動化プログラムを作成するのであれば、プログラミングができる人材を複数人確保し、プログラム自体がブラックボックスにならない様にする

手順書の見直しや自動化によって、標準化を図り、機動力があり、作業品質の安定したアウトプットが出せる組織にしていきましょう。