ゆんの業務改善ブログ

①生産性向上 ②業務改善 ③自動化 について情報発信しています。VBAプログラムは本当の初心者から他のアプリケーションを呼び出して使う上級者的な使い方まで幅広いレベルで解説していきます。

失敗しない業務改善の為に知っておきたい自動化のたった5つの手順

今回は業務の自動化を図るときに気をつけるポイントについて解説します。なお、自動化は業務改善の一種ですが、自動化そのものは生産性の向上には直接影響しません。前提である生産性の向上がそもそもの目的であり、自動化はその手段です。自動化そのものが目的では無い事については、生産性を向上する為に具体的に実行すること:労働時間削減による生産性向上は本質では無いで詳しく解説しています。

目次

自動化ありきで進めないことが大切

前書きに書いた通り、自動化は業務改善の手段です。自動化そのものが目的となってはいけません。理由は下記の通りです。

  • RPAなどツールの導入ありきになる

RPAやAIなど流行の言葉があります。特に経営層はこれらの言葉に触れると「ウチにも導入すれば効果が上げられるのでは無いか」と思いがちです。これは現場の作業から距離があるために起きる現象である一方、業績を上げたいという気持ちから来る感情なので、批判することは的外れです。

しかし、ツールや技術ありきになると、そもそも何でそれらのツールや技術を採用するのか、という原点が置き去りになり、目的を見失ってしまう可能性があります。これらについては後ほど、個人レベルの自動化と部署全体や部署間にまたがる自動化に分けて解説します。

  • 自動化した内容がブラックボックスになる可能性がある

自動化は正しいステップを踏めば、大きな生産性向上につなげることができます。一方で、自動化そのものが目的でツールや技術の導入を進めれば、まずほぼ確実にその自動化した部分がブラックボックスになることが考えられます。ブラックボックスとは中が見えない箱と言う事です。コンピュータが勝手に作業を進めてくれるが、どうやってやってるのか、何故やってるのか分からない状態になると言うことです。

なぜブラックボックスが行けないのでしょうか。それは、業務の本質を分かっていない状態になると言う事が問題だからです。そもそもなぜその業務が存在しているのか分からないがとにかく手を動かしている。その理由が分からなければ、要らないならやめてしまえばいい、とかよりよい方法が無いか、と言った視点が失われます。つまり、自動化を行う事により、根本的な業務の改善ができなくなる可能性が出てくるのです。

よって、自動化は本質的な業務プロセスの改善を行って、排除できない業務についてルーチン化を行い、ようやくたどり着く業務改善です。自動化は業務改善プロセスの最後のステップ、仕上げ段階である事を今一度頭に入れておきましょう。

個人レベルの自動化

個人レベルの自動化は、積極的に行っても特に問題はありません。なぜなら自分の業務の自動化と言う事は自分が中身を熟知しているからです。むしろ、単調な作業はなんとかして自動化できないか、と工夫をするのが健全と言えるでしょう。

ただし、これには条件があります。それは、自分の業務を熟知している事です。自分の業務なんだから詳しくて当たり前ですか?そうではありません。それは日々の作業が流れるようにこなせると言うだけです。

  • そもそも何故その業務が必要なのか
  • 後工程の人は自分が提供したデータをどのように利用しているのか
  • その業務が売上や経費の削減にどの様な形でどの程度貢献しているのか/していないのか

このようなことを分かっていることが熟知していると言う事です。もしこれらが分かっていないならば、個人レベルの自動化であっても、一旦立ち止まって「この作業、やめたらどうなるのかな?」と考えてみましょう。ちなみに、上の3項目のようなことを常に頭に置いているかどうかができる人とただの一人前の人の違いだと思います。

異動や退職などで業務を引き継ぐ時には、自分で開発した自動化ツールは渡さないのが吉です。小善対悪に似たり。自分は業務の内容を熟知しているので、自動化しても構いませんでした。自動化ツールを渡すことによって、引き継ぎした相手が中身を熟知する機会を失う様なことはやめておきましょう。意地悪でツールを渡さないのではありません。

部署全体や部署間にまたがる業務の自動化

部署全体や部署間にまたがる業務の自動化を検討するときは細心の注意が必要です。理由は下記が挙げられます。

  • 自分が熟知していない領域を含む
  • ブラックボックス化させない為の下準備が必要となる
  • メンテナンスを継続する体制を維持するのが困難である

順に解説していきます。

自分が熟知していない領域を含む

自分が熟知していない領域を含むと言う事は、そもそもその業務を自動化するのが適切な段階まで進んでいるのかが自動化を担当する人には分からないと言う事です。自動化するのは先にも述べたように業務改善の最終段階でした。つまり、業務そのものを廃止したり、別のやり方が無いか検討をした後かどうかが分からない状況で自動化をするのは危険と言うことです。

一度自動化してしまうと、その部分の作業工数は削減できる為、それ以上の業務改善を行う誘因が働きにくくなります。このため、本来不要な作業を自動化したり、効率のいいやり方があるにもかかわらずその部分を自動化することにつながってしまうことがあるのです。

ブラックボックス化させない為の下準備が必要となる

先にも述べたように、自動化をしてしまうとブラックボックス化する事につながります。個人レベルの自動化では、自分自身が業務を熟知しているため、ブラックボックス化しても大した問題にはなりませんでしたが、組織レベルの自動化となると話は別です。

ビジネス環境の変化の激しい昨今、業務のやり方が変わらないとは考えにくいです。むしろ、半年後には別の業務の進め方に変わっているかもしれないという前提に立つ方が健全です。自動化をすると、その自動化された部分に対しては、それ以上改善を仕様とする誘因が働きにくくなります。と言う事は、自動化をすればするほど、業務のやり方を変えにくくなることにつながります。

この点が要注意です。また、ブラックボックスになると、メンテナンスをする事ができなくなります。メンテナンスとは業務のやり方が変わったときに、新しい業務のやり方に合わせて、自動化ツールの中のプログラムを書き換える作業です。Windowsのバージョンが変わるとツールが動かなくなった、と言う話も良く聞きます。ブラックボックス化してしまうと中身が分からないので、このようにツールの変更が必要になったときに対応できなくなってしまいます。

よって、部署や部署をまたぐ自動化を検討する際には、自動化ツールをブラックボックス化させない為の体制を構築することが先となります。

例えば、仕様書が書ける人を育成する、とか、プログラミングのコーディング規約を作成する、と言った事です。仕様書があれば、そのプログラムがどのような動作を行っているかが記録として残っているので、どの部分を変更すれば良いのかが分かります。コーディング規約はプログラムを作成するときの決まり事のことです。規約を作っておくことにより、他の人がプログラムの中身を見たときに、理解しやすいと言うメリットがあります。プログラムの中身が変更しやすいように自動化ツールを作成することは、ブラックボックス化しないために必要な作業です。

よって、部署レベルの自動化を検討する場合は、これらの体制を先に整える必要があります。

まとめ

以上、業務自動化の際に気をつけることを解説してきました。最後に自動化の前に検討すべき内容と手順まとめておきます。

  1. まずは業務の整理整頓。廃止できる業務は廃止
  2. 廃止できない業務は業務プロセスを変更を検討する
  3. それでも無くならない業務はルーチン化する
  4. 自動化したツールをメンテナンスできる体制を整える
  5. 自動化する

自動化そのものが目的とならないように&自動化をするまでの準備を怠らずに、業務改善に取り組んでいきましょう。