ゆんの業務改善ブログ

①生産性向上 ②業務改善 ③自動化 について情報発信しています。VBAプログラムは本当の初心者から他のアプリケーションを呼び出して使う上級者的な使い方まで幅広いレベルで解説していきます。

自動化|業務改善関連用語事典

自動化とは具体的に何をする事なのか、どういった効果があるのか業務改善という切り口で解説します。この記事は2020年2月15日時点で執筆しており、将来の展望に関する観測の記事を含みます。

目次

自動化の概要

自動化とは作業を人の手を介さずにできる様にすることです。家庭内においては洗濯機や食器洗浄機、掃除機などすでに相当の自動化が進んでいます。業務改善の文脈で自動化と言う言葉が使われた場合はオフィスワークではソフトウェアでPC作業の一部、工場や倉庫では生産や場内輸送や梱包作業を人の手から解放する事を意味します。

自動化は業務改善や生産性向上と同義で語られる事があります。しかし本来は包含関係があり、同義ではありません。

自動化は広義の生産性向上の一部
業務改善・生産性向上・自動化の包含関係

業務改善は業務が効率化されたり、売上が拡大したり、職場環境が改善して従業員の満足度が高まったり、業務に関することが良くなれば全て業務改善です。その中から業務効率が良くなるものに関しては広い意味での生産性向上となります。その中で、付加価値の増大すなわち粗利益率の向上にあたるものが狭義の生産性向上です。広義の生産性向上のうち、作業を人の手を介さずにできるようにすることが自動化です。

自動化は既に触れた通り、工場や倉庫、家庭内におけるメカトロニクス的な自動化とオフィスワークを中心としてソフトな自動化に分けることができます。目か的な自動化に付いては既に相当成熟しているおり、また、AIやIoTによるビッグデータ解析が注目されている現在のビジネス環境を鑑みて、この記事ではオフィスワークを中心としたソフトな自動化に重きを置いて解説していきます。

単調作業の自動化

完全に毎回同じ、またはルールベースの条件に応じた作業を繰り返す作業です。例としては毎朝同じ種類のデータを基幹システムからダウンロードしたり、そのデータを別の帳票に転記して加工すると言うような作業です。他にもあるウェブサイトから定期的に情報を取得する、といった例が考えられます。

単調作業の自動化のメリット

単調作業の自動化のメリットを挙げると下記の通りです。

  • 時間削減
  • 従業員の仕事に対する満足度の向上
  • 作業品質の安定化
  • 属人化の防止

時間削減は残業が多いような職場では有効です。しかし、従業員の作業時間の削減は本来、生産性の向上(狭義)には関係しません。事務職の労働時間を削減しても粗利益率の向上には結びつかないからです。よって自動化が狭義の生産性向上に貢献するには、空いた時間で何をするかが大切となります。粗利益率を高めることが狭義の生産性向上に当たるため、空いた時間を付加価値のある新製品のアイデア出しに使ったり、経費削減活動に充てれば、自動化による時間削減が粗利益率の向上に当たったことになります。ベン図の一番真ん中の生産性向上(狭義)と自動化の重なった部分です。

従業員の仕事に対する満足度の向上は単調労働に対する不満足感の除去です。上述のように空いた時間をより価値の高い仕事にシフトできれば、さらに仕事に対するやりがいや満足度の向上へとつながっていきます。単調作業を減らすだけでも精神衛生上のプラス効果はあります。

作業品質の安定化と属人化の防止については、作業をプログラムで自動化する事により誰でも同じ作業結果を得ることができるようになると言う事です。特定の人に作業を依存したり、人によって仕事の結果の出来映えが違うことは組織として、依存している相手を失ったときのダメージが大きい事を意味し、リスクがあります。作業を自動化する事によって作業品質を安定化させることはリスク回避の意味もあります。ただし、リスク回避そのものは直接利益を生み出すわけではないため、狭義の生産性向上とはなりません。

単調作業の自動化のデメリット

単調作業の自動化のデメリットは下記の通りです。

  • 作業がブラックボックス化しやすい
  • 自動化ツールを作成した人に依存するという別の属人化が起きる可能性がある

単調作業の自動化は前項で説明したように、目先の業務の属人化を防ぎ作業品質を安定させる効果があります。しかし注意点があり、自動化の仕組みを作った人に依存するという別の属人化を産む可能性があります。これは回避が可能ですy。特定の人だけに自動化プログラムを作成させずに、複数の開発人員を育てる。自動化ツールは仕様書を作成する、といった事をルール化することにより回避ができます。逆に複数の自動化ツールの開発人員が育てられなかったり、仕様書をきちんと残すというルールができないウチは安易に自動化を進めることはリスクがあります。

もし多くの業務やミッションクリティカルな業務を自動化して、業務内容が変更になったとき、ツールの改修ができないと業務に影響を与えてしまいます。長い間自動化ツールを使って作業を行うことが当たり前となっていると、元々手作業で行っていた業務もやり方を忘れてしまって、手作業でもリカバリーができないと言う最悪の自体が生じ得ます。

このように単調な業務であっても、どの作業を自動化するかというのは責任者がリスクとメリットのバランスを考慮し、リスクを抑える見込みを慎重に判断して進めるべきモノです。そして、リスクが抑えられると判断すれば、あとはしっかりと準備をして粛々と自動化を進めることになります。

AIによる自動化

現在多くの企業で課題となっている自動化で、AI・人工知能といった言葉と併用して語られるのがこの自動化です。AIや人工知能というと、あたかもコンピューターが考えているかのような響きがありますが、実態はデータ分析です。前項でルールベースの条件に応じた作業の自動化を挙げましたが、ルール化できていない条件を自動化するのがこの項で述べる自動化です。

高度な分析やコグニティブと言った言葉が使われる事があります。これはルール化できていない判断を大量のデータから傾向を見つけ、可能性の高い方を取ると言ったようなことです。例えば、男性か女性かを見分ける装置を作りたいとした時、ルールベースで「もしAだったら男性、そうでなければ女性」というようなルールが見つけられないとします。そのような時、過去の健康診断の結果から体重が70kg以上の人はほぼ男性だったとすると、その人の体重を調べれば男性か女性か高い確率で判断できる、と言う事になります。

つまり、高度な判断とは言っても確率的にもっとも確からしいものを過去のデータから選択するだけですので、確実なルールベースの判断基準が与えられるのであれば、ルールベースの判断をするのがベストです。ルールベースの判断基準が作成出来ない時に、「これは人でないと判断できない」とされていた判断をできるようにするのがAI・人工知能と言われる技術です。

これにより判断を自動化する事ができます。例えば道路のひび割れのチェックして補修工事が必要かどうかの判断をする、というのはAIによる自動化の例です。ある道路に補修工事が必要かどうかは道路のダメージ状況によって判断しますが、明確な基準を設けるのは困難です。そこで、過去の画像データで補修工事が必要とされた道路の画像とそうでない画像を沢山学習します。そして新しい道路の画像を読み込んだときに、「これは過去のデータから言って補修が必要なはず」という出力結果を得ます。これが判断を含む作業の自動化です。

AIによる自動化のメリット

自動化によるメリットはなんと言ってもルールベースで判断できない自動化ができると言う点です。上の道路状況のチェックの技術は同様の技術としてトンネルや橋梁のチェックにも使われており、すでに大幅な時間削減を達成しています。また時間削減を達成するだけでなく、カメラをドローンに搭載することによって人間が直接目視するのが危険な設備の点検が可能になったり、人間よりも見落としが少なく作業品質が高いと言ったメリットがあります。

AIによる自動化のデメリット

AIによる自動化のデメリットは経営判断に使う場合にどうしてその判断になったのかが分からないと言う点です。過去のデータを学習して傾向を学習した結果、今の状況ではこの方法がうまくいく可能性が最も高い、としか言えないと言うことです。

しかし、これはある意味デメリットではないと言う言い方もあります。なぜならば、とにかく計算したらこうなったのだ、と言う事で納得できればAIの算出した結果を採用することができるからです。AIの算出した結果に納得するためには、過去のデータをどういうように学習したのか、その学習結果をどう活用するのか、というアルゴリズムそのものについてある程度の理解が必要です。この学習コストがデメリットと言えばデメリットです。しかし、それくらいは勉強しましょう、と言いたいと思います。

DX時代の自動化の展望

今後、単調作業だけでなくAIによる判断も含めた自動化をいかに経営やオフィスワークの現場に取り入れていけるかがビジネスにおけるキーになるとこの記事の筆者は考えています。理由は、道路やトンネルの傷を人間よりも速く正確に検出できるのと同様に、ビジネス環境の変化や次に起こすべきアクションで人間より速く正確に判断できる場面が存在するハズだと考えるからです。

一方、気をつけなければならないのはルールベースで判断できる事はルールベースの方が強いと言う事です。AIは優れた技術ですが、AIを使う事そのものが目的とならないようにする必要があると考えます。その上で、トップダウンでAIの導入を推進するべきです。

そのためには、経営トップがどのような課題にAIの技術を導入すべきなのか、逆にどういった課題はルールベースの自動化で対応すべきなのかが判断できるように学びを怠らないことです。そして、トップが導入を決めたAIの活用領域に対して現場の人材をしっかりと育成していくことが必要です。AIは開発者だけでなく、その出力結果を活用する人材にもリテラシーが必要です。経営層の勉強と判断、現場の勉強、AI導入の必要性の認識、AIよりもルールベースが良い場合もある事の理解の浸透といった事が全て揃って、やっと導入できるのがAI技術です。その上でAI技術が使える様なデータの取り扱いをするように業務を新たに設計する必要があります。既存の手順を置き換える従来の自動化ではAI技術を使う事はできません。

これらを全て揃えるのは並大抵の努力ではなく、今後はAI導入のコンサルタント業が雨後の竹の子のように出てくると予想します。そしてこれらの業者に高額のコンサルフィーを取られて終わりにならない様に、まさに学ぶ事こそが今求められている事なのです。

自動化のまとめ

ここまでの説明をまとめます。

  • 自動化にはメカ的な自動化とソフトな自動化がある
  • ソフトな自動化には単調作業の自動化とAIによる自動化がある
  • 自動化のメリットは時間削減、従業員の満足度向上、作業品質の安定化、属人化の防止
  • 自動化のデメリットは自動化ツールを開発する人員への属人化の可能性があること
  • AIによる自動化のメリットは人間より速く正確な判断ができる領域がある事
  • AIによる自動化のデメリットは経営判断に使う場合にどうしてその判断になったのかが分からない事
  • 上記はAIによる自動化のデメリットは捉え方によってはデメリットとは言えない
  • ルールベースで自動化できるのであればそれが一番良い
  • AI導入は経営トップから現場まで全ての人の深い理解が必要
  • AI導入は既存手順を置き換える従来の自動化ではなく、データをうまく活用するために新たに業務を設計する事が必要
  • 学ぶ姿勢を持ち続けないとコンサル業に搾取されると予測する

既存の自動化とAIによる自動化をうまく組み合わせて付加価値の高い自動化を産み出すようにしましょう。