業務改善と一口に言ってもその切り口は自動化や生産性向上、品質向上など様々です。今回はあらゆる業務改善に関わる業務の作業手順と言うものについて考えます。なお、この記事は業務改善で手をつけるポイント25選のうちの、【作業手順を現場に作り直させる】を深掘り解説したものです。
目次
作業手順を現場に作り直させる
文書で定められた作業手順が守られていない実態
工場や倉庫現場、バックオフィスで行われる業務の多くには作業の手順が定められています。特にISO9001を取得している企業においては細かく作業手順が文書として保管されている場合があります。細かく手順が定められている場合、本当にその作業手順が現場で守られているでしょうか。
徹底されている現場ではもちろんきちんと実行されていますが、手順書が形骸化していて実際の現場の手順と手順書の手順が乖離している場合もあります。このことは作業品質の劣化や業務改善を図る際にネックとなってしまいます。なぜこのような手順書と実際の手順の乖離が発生するのかを考えてみましょう。
手順書と実際の手順に乖離が発生する理由
手順書に書いてある手順と実際の手順が乖離する理由のひとつ目は、手順書の手順に無駄があると作業者に思われていることです。もっと言えば、「面倒くさい」手順になっていたり、「必要性を感じない」手順になっていると言うことです。これは手順書が正しい場合もありますし、現場の感覚が正しい場合もあります。いずれの場合も作業者が「面倒くさい」、「必要性を感じない」手順になっていることに変わりはありません。
理由のふたつ目は、作業の前提やプロセス自体が変更になっているにもかかわらず手順書が改訂されていない場合です。この場合は手順書の改訂がタイムリーに行われていないという管理面での問題です。
バックオフィスではうまくいかない作業手順の作成
前項で挙げた手順書と手順の乖離はいずれの場合も現場が主導で作業手順を作成、改訂する必要があります。バックオフィスが作成すると現場からは手順の押しつけ感があるのと、どうしても頭の中の作業と実際の作業では乖離ができてしまうからです。また、作業の前提やプロセス自体が変更になった場合も、現場から手順書の改訂の必要性の声が上がってくるような風通しの良い現場環境を作っておくことによって、改訂漏れを防ぐこともできます。
本来、作業手順の変更と手順書の改訂はセットで行われるべきモノですが、このように風通しの良い職場にしておくことによって漏れを防ぐ体制にしておくことも大事です。
現場の知見を生かす作業手順作り
現場主導で手順書を作成するメリットは大きく、下記が挙げられます。
- 現場の作業のムダや効率化の案は現場が一番よく知っているので、本当に有効な作業手順ができる
- 自分で作った作業手順なので愛着がわき、手順を大切にする
- 手順を作成すると言う経験を通してスキルが向上する
- 手順が評価され、モチベーションにつながる
- 常に改善を意識した業務遂行を行うようになる
手順書のムダに文句を言うくらいなら、文句ではなくちゃんと意見として提示しようと言う事です。そしてそれが妥当な内容ならきちんと審議、評価し、手順書に反映させて正式手順として取り入れる。そうすることによって、提案者にとってはモチベーションにつながりますし、常に改善の余地がないかと言った目で業務に取り組むようになります。この、きちんと耳を貸して採用し、評価すると言うところが人材育成の面においても効果を発揮します。
そのため、改善提案を評価するような仕組みを取り入れると良いでしょう。ただし、週に1回とか月に1回と言った様に改善提案をノルマ化すると押しつけられ感が出て、モチベーションは下がり、改善案を提出すること自体が目的となってしまいます。こうなると、本音ではないとりあえずの改善提案をひねり出すことに時間を使ってしまうため、むしろ逆効果です。自ら提案し、それが評価される土壌を醸成しましょう。誤って一度ノルマ化してしまうと、改善提案を強制する制度を廃止しても自ら改善する風土に戻すのは難しくなってしまいますので要注意です。
作業手順を現場に作り直させるまとめ
簡単にまとめると、下記の様になります。
- 作業のムダは現場がよく知っているので作業手順は現場で改善する
- 現場による手順の改訂は現場のモチベーションにつながる
- 手順の改訂に携わった経験があると、日常の業務を常に改善の視点から捉えて業務遂行するようになる
- 手順の改善の声が愚痴、不満としてではなく、改善提案として上がってくるような風通しの良い職場にする
- 手順の改善提案を評価する仕組みを取り入れる
- 改善提案をノルマ化すると、本音ではない改善提案をひねり出す事に時間を使ってしまい逆効果となる
- 一度でも改善提案をノルマ化してしまうと、制度を廃止しても自由に改善提案を出す風土を醸成すること自体が困難となる
業務改善をボトムアップで行う事により、手順書を形骸化させずに生きた手順書として活用できる職場にしていきましょう。
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